第2章 迷走 第19話
「じゃ、次は坂爪、頼む」
「はい」
「では、僕の最初の獲物について話しますね。僕の最初は、仕事ではなくて、有害鳥獣捕獲だったんだ。
この仕事に就いていたけれど、狩猟グループにも所属していて、そこの有害捕獲にはじめて参加した日、まさにデビュー戦だったわけだけれど、その時のイノシシがはじめて」
「そうなんですか」
「そう、グループの先輩から、ここで待っていろって言われた場所で待っていたら、始まってから三時間くらい経った時にイノシシが単独で走ってきて、一発撃って終わり。
案内してくれた先輩には、『バラ弾持ってきたか』って聞かれて、『いいえスラッグだけです』って言ったら『初心者が当たるわけないだろう。今度からバラ弾持ってこい』って言われていたんだけれど、はじめての発砲でイノシシの頭を撃ち抜いたら、驚かれたのと、『マグレだな』って言われてね」
「あぁ、俺と同じです」
「後田、お前当たってないじゃん」
「いや、そうじゃなくて、バラ弾持ってこいとかスラッグじゃ当たるわけないだろうってところ」
「そっか~、どこでも同じことを言うんだな」
「それで、『マグレだな』って言われたのが、悔しくて、その次の週も、さらに翌週もと、三週連続で有害鳥獣捕獲に行って、毎回イノシシを獲ったら、『お前、上手いなぁ』って言われたんだ。
でも、心の中じゃ、うちの会社の人たちはもっと上手いですって言ってた」
「すごいですね」
「すごくないよ。その頃は、まだまだ銃をスイングして撃てるわけじゃなかったから、全部ここって決めた場所での待ち撃ちだもの。
山里さんは、スイングしながらでも当てちゃうからね」
「そうですね。講座のとき、動画で見せてもらいました」
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