第2章 迷走 第18話
「じゃ、続きね。山の上から山里さんが勢子でシカを追ってくれていたんだけれど、ちょうど坂爪さんの前に三頭のシカが出てきたの。
それを彼が撃って、一頭倒して、残りの二頭が私の方へ走ってきたの。
山里さんに教えられたとおり、シカの通り道で木と木の間が広いところに銃を向けておいて、シカの首が見えた瞬間に撃ったんだけれど、どうも力みすぎて下を撃ってしまったの。
あわてて、次のポイントに銃を向けたら、直ぐにシカが見えて、もう一発撃ったら、ちょうど心臓に命中して、もう一頭は逆走して坂爪さんの方へ戻って行って、そこで彼がまた撃っておしまい。
結局、三頭シカがでて、二人で三頭獲ったのが最初だったの。緊張して、足はガクガクするし、喉は渇くし、アドレナリンが出た~って感じだったかも」
「そうなんですかぁ。凄いですね。僕なんか、上は撃つは、後は撃つはで、まるでダメでした」
後田のやつ、またもや、しかも今度はさっき山里さんに教えられたことを喋ってやがる。
「私も、最初はきっとそうだったのよ。でも、初心者が失敗しやすいことをしっかり聞いていたので、最初外した時もどうして外したのかを考える余裕があったの。
だから二発目では、しっかり心臓を狙えて撃てたの」
「心臓を、狙えて・・・」
「後田、お前、どこ狙って撃ったんだっけ?」
「もう言うなよ。シカだよシカ!」
「そうよね。最初は、心臓を狙ってなんてできっこないって思うもの。でも、射撃場で練習していて、木から首が出た瞬間をイメージすると、クレーがちょうど心臓のあたりになるのね。
だから、自信をもって狙って撃ったって言えるわ」
「凄いですね」
「でも坂爪さんや武井さんは、最初の一発目から当ててるからもっと凄いわね」
「そうなんですか」
「山里さん、そろそろ私、打ち合わせの時間なので失礼します。柴山君、後田君、ごゆっくり」
「ありがとうございました」
後田、お前より先に、俺の名前を呼んでくれたぜ。
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