第2章 迷走 第17話
数分後、山里が竹山と坂爪の二人を連れて戻ってきた。手には、専門学校のパンフレットが二部。それから、ペットボトルのお茶が二本。
「お待たせ。喉が渇いたろう。これでも飲んで。それから、うちの坂爪と竹山」
「はじめまして。坂爪です」
「はじめまして。竹山です」
「柴山です」
「後田です、よろしくお願いします」
「じゃ、まずはパンフレットだけれど、ここで説明するのも時間がもったいないから、家で読んでみて。
もし分からないことがあれば、直接学校に電話するなり、毎月実施しているオープンキャンパスがあるはずだから、そこで聞いた方がいいと思う。
せっかくだから、二人よりもちょっと先輩の坂爪と竹山の話を聞いた方が面白いだろうから、それでいいかな」
「はい。ありがとうございます」
「じゃ、打ち合わせの予定があるから竹山が先に話そうか」
「はい。でも何を話したらいいんでしょう」
「あぁ、ごめん。ごめん。初めてシカを撃った時のことで良いから。後田君は銃のライセンスをもっていて、狩猟経験あり。
シカを撃ったけれど、収穫なし。柴山君は、まだ狩猟経験はないけれど、専門学校への進学を考えているというところかな」
「はい。わかりました。じゃ、私が初めてシカを仕留めた時のことを話しますね」
女性ハンターの話を聞く機会なんて滅多にない、しかも女性ともなれば超希少種だ!
「私が初めてシカを仕留めたのは、北関東のある県の現場でした。山里さんたちと合計五名で巻き狩りをやっていて、坂爪さんが私のとなりの射手で、山里さんが勢子でした」
後田が、急に脇を突き、「なぁ、勢子ってわかってる」って、聞いてきた。
まるで竹山さんに俺は知っているけど、こいつは知らないですよとでも言いたげな感じである。こいつ、俺をだしにして、ちゃっかり自分を売り込んでやがる。
「そうね、ごめんなさい。勢子っていうのは、獲物を追い出す係りの人のことで、射手は撃つ人のことね」
「あのぅ、僕のところでは、タツって呼んでますが・・・」
またしても後田のやつ、自分を売り込んでる。
「えぇ、タツとも言うわね。でも、その呼び方って地方ごとに違いがあって、射手のことをタツ、射手と射手の間のことをタツマと呼ぶ地域もあれば、射手のことをタツマって呼ぶ地域もあるの。
それから撃ち手だとか、ブッパなんていうところもあって、これからの捕獲従事者の育成では言葉の統一も必要だって山里さんがいうので、うちでは射手って呼ぶようにしているの。
その他にも、言葉の統一っていうことではいろいろと面白い話もあるから、あとで時間があったら山里さんに聞いてみて」
「ありがとうございます」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます