第107話 エンプレス
その日の夜、愛子は部屋を離れて101号室に向かった。
愛子「失礼します。後藤先生、少しお話ししたい事があるのですが今はお時間大丈夫でしょうか。」
後藤「構わない。部屋で話すか?それとも食堂で二人で話すか?」
愛子「出来れば二人きりで話したいです。」
後藤「分かった。新谷先生、水田さん、緊急時の対応は少しの間お願いします。」
新谷「承知しました〜。」
食堂の電気を点けると、二人はテーブルに向かい合って座った。
後藤「それで、どうしたのかな?改まって。」
愛子「お聞きしたい事は、この合宿中に行われるエンプレスというチームの事です。少し気になったので調べようとしても情報がインターネットにすら回ってない。具体的な情報はありますか?」
後藤「練習試合前に話そうとしていたが、エンプレスというチームはつい最近出来たチームだ。チームといっても、大会に出たりはしない特別チームらしいがな。」
愛子「そんなチームがどうして私たちとやりたいなんて…第一何処から先生に連絡を取ったんですか?」
後藤「エンプレスはな、お前もよく知ってるメンバーで構成されている。」
愛子「というと?」
後藤「キャプテンが光だからな。」
それを聞いた愛子は少し動揺した表情を見せた
愛子「えっ…だって、光さんはヴィクトリアに入団したじゃないですか。」
後藤「勿論光だけじゃない。飛鳥、マヤ、桃子といった佐倉中央の元メンバーや暁月の浅野、神谷、吉良、佐久間、元日大船橋の大森、元令和学園の浅村がいる。」
愛子「そんなチームが…って、10人しかいないんですか?」
後藤「肝心の11人目はな…つかさだからな。」
愛子「佐倉中央を裏切ってそっちのチームに行ったって事ですね。本当に呆れた人間ですね」
後藤「早まるな。エンプレスは私たちが連敗した日大船橋に5-0で勝っている。」
その瞬間、愛子は目から鱗が落ちたような顔をした。
愛子(春日井が言ってた、『キャプテンはもっと先に進んでいる』ってそういう事か…)
後藤「何か思いついたか?」
愛子「ええ、点と点が結ばれて線になりました。私はあの日からつかさを拒否し続けていました。でも、私たちが彼女を受け入れない限りチームとして向上する事は決してないってことが今分かりました。」
後藤「そうだな。君にだけ先に教えるが、つかさはその試合を機にチームに戻りたがっているそうだが、受け入れてくれるかな?」
愛子「…はい!」
後藤「あとは恐らく千景だけだが…」
千景を食堂に呼び、愛子にした話をすると顎をテーブルに乗せて少し不満げであった。
千景「うぇ〜…なぁんか都合いい気がするんですけどぉ〜。」
後藤「勿論そう思うのも自然かもしれないが、やはりつかさが必要とは思わないか?」
千景「それは分かりますとも。ただ、絶対心を入れ替えているかどうかなんて分からないじゃないですかぁ。」
後藤「なら、試合で君が判断してくれ。以前と何も変わってない、独りよがりだと判断したら招き入れないつもりだ。」
千景(あれ、いつの間にか私とんでも無い大役担ってね…?)
後藤「まあ、それでも数試合はキャプテンは外すつもりだがな。ベンチスタートなども考えている。これはペナルティとするつもりだ。この事を含めて明日の夕食後にチーム全体に発信するからそれまでは口外しないように。今日はもう寝なさい。」
いつの間にか時計は0時前を指していた。
翌日の夜に、後藤は一連を説明してつかさが戻ってくる事についてのチームの大半からの了承を得た。食堂を去るメンバーの何人かは了承しなかった千景をひそひそ声で話していたが、千景は心の奥底で自分の決意を固めていた。
千景(私を何と批判しようが構わない。話は私のこの目にプレーを焼き付けてからだ!)
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