第50話 アドポリスを救え! その5
少しの休息。
アドポリス全体が、一息ついたかのような静寂の
召喚士が放ったモンスターは、その地に巣食っていたモンスターを追い払っていたようで、ここしばらくモンスター討伐の依頼は無い。
採集やお使いクエストばかりだ。
俺達モフライダーズは、それらの仕事を受けず、のんびりできるだけの金がある。
召喚されたモンスター達を素材に変えたお陰だ。
こればかりは、召喚士様々と言えるかも。
ただ、俺達も暇ではないわけで。
……というのも。
「モフライダーズの諸君。そろそろ……どうかなあ」
ギルドマスターが困ったような顔をしている。
「ああ、分かってます。休息はもうやめにして、受けた仕事を果たしに行きますよ!」
そう、我がパーティは、イリアノス王国は神都ラグナスへの親書を届ける仕事を受注していたのだった。
アドポリスの危機があって、それも一時棚上げになっていたのだが。
この都市の復興はどんどん進んでいる。
教会も新しい建物ができるようだ。
冒険者の数はそれなりに減ってしまったが、新たな若き冒険者候補が、地方からぞくぞくやって来ている。
「あのっ、俺達、冒険者になりたいんですっ」
「うちの村に来た冒険者が、ニワトリの化け物をあっさりやっつけててっ! 俺らもそんなふうになりたくて!」
冒険者の卵がやって来たぞ。
そこへ、酒場にいた元若手冒険者パーティが声をかける。
「新人、冒険者は厳しいぞ。基本ってものを俺ら先輩が教えてやる!」
「マジっすか!」
若手の彼らも、すっかりいっぱしの冒険者だ。
そして、連れ立って酒場の席へ行こうとする彼らを、受付嬢が慌てて呼び止める。
「ちょっと! ちょーっと!! 鑑定!! クラス鑑定しないといけないでしょーっ!! 待ちなさーい!!」
冒険者ギルドに賑わいが戻ってきた。
ここだけではない。
アドポリスの街にも、以前のような活気が少しずつ帰ってきている。
もう大丈夫だろう。
イリアノス王国はそこそこ遠いから、行ったらなかなか帰ってこれない。
でも、俺がいない程度ではアドポリスはどうもなるまい。
俺は晴れやかな気分でギルドマスターに向き直った。
「じゃ、明日の朝に出ます」
旅立ちだ。
「たくさん買うですよ!」
『ミルクをにゃ』
「ミルクはだめです! 悪くなっちゃうですよ!」
『そんにゃ殺生にゃ』
旅の間の食料購入。
担当はクルミなのだが、ついてきたドレがわがままを言っている。
立ち上がってクルミの足にくっつき、にゃあにゃあ鳴いている。
「ええと、じゃあちょっとお高いですけど、チーズでどうですか!」
『チーズにゃ!? 未知の食物にゃ』
「ミルクからできてるらしいです!」
『それで妥協するにゃ……!』
おっ、交渉が成立したようだ。
「チーズくださいな!」
『にゃあにゃあ』
クルミとドレが並んでお買い物をする様は、かなり微笑ましい。
みんなニコニコしながらそれを眺めている。
まさかこのリス尻尾の少女が、アドポリスを襲った黒幕をやっつけた張本人だとは気づくまい。
そして隣の猫が別の世界から来た猫だとも。
人は見かけによらない。
そして俺は俺で、みんなの栄養バランスを考えた副菜を購入していた。
乾燥した肉やナッツでは、摂取できない栄養というものがあるのだよね。
なので、漬物が必要になるのだ。
俺のチョイスする漬物は発酵させたもので癖があり、パーティメンバーには不評だ。
なので、俺がリーダー命令で無理やり食べさせている。
体にいいからね。
「おっ、これなんか凄くいい漬かり具合じゃないか」
『わふん』
ブランが凄く嫌そうな顔をした。
「神都ラグナスまでは、わたくしが詳しいですからねー」
夕食を囲むテーブルで、アリサが地図を広げてみせた。
彼女が掲げるそれは、アドポリスからラグナスまでの道のりが描かれている。
「途中、モンスターが出る場所がありますし、野盗も出てまいります。ですが……」
ちらりとアリサが、愛しいものを見る目を向けた。
横合いで肉とチーズを食べるモフモフ二匹に。
『わふ?』
『珍味だにゃ!』
「ま、そうっすねえ。この! 俺! カイルがいれば安心っすね!」
「あなたじゃありませんわ」
「なんだとお、この胸のでかい司祭!」
「うっさいですよこの脳みそまで筋肉!!」
わいわいと賑やかな、我がパーティだ。
かつてのパーティを追放された時は、自分がこういう場所を持てるなんて想像もできなかったな。
『わふん?』
「そうそう、何もかも君から始まったな、ブラン」
夜が明ければ、旅立ちの時だ。
俺達は新しい世界に向かって旅出つ。
さらばアドポリス。
しばしの別れ。
モフライダーズの冒険は、まだまだ始まったばかりなのだ。
第一部 おわり
─────────
俺たたエンド!
第一部が終わり、明日からは普通に第二部が始まります。
一日2回更新はこれで終わり。
明日からは、夕方五時前後の更新になります。
よろしくお願いします。
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