第123話 布団の上で

僕達は布団の上で正座をして、

モジモジしながらお互いを見つめ合っていた。


「先ぱ~い!

お見合いじゃないんですから、

何か話して下さ~い!」


僕がアセ・アセしながらそう言うと、

先輩も頭を掻きながら、 


「いや~ 本日はお日柄も良く~」


と、なんのこっちゃ!


「先輩、結婚式のスピーチじゃないんですから~」


「じゃあ、宜しくお願いします?」


そう言って、深々と布団の上で正座したままお辞儀した。


「先ぱ~い!

それも変ですよ!」


僕が少し落ち着いて来ると、


「何だか改まると

ギクシャクしてしまうな。

こういうことは自然の流れで行くのが一番だな。

ハハハ~ ここはもう笑うしかないな

でも足が痺れた~」


そう先輩が言って足を崩してフ~フ~し始めたので、

僕は爆笑してしまった。

やっぱり先輩も思いっきり緊張していたんだ。

そこで、僕も足を崩して、

ゆっくりとリラックスして座り込んだ。


でも確かに、こういう事は

雰囲気とムードが大切だと思った。

それがあると、かなりの確率で、

自然と事に持って行けると思う。

今までがそうであったように。


そこで、自分たちがいかにも、

意識してやろうとしていたのが分かった。


先輩も一声が出た後は、

リラックスをしたようにして、


「な、実は俺、

要で試してみたい事があってさ、

良いかな?」


と目を輝かせて聞いてきた。


「え~、変な事じゃ無いでしょうね~?」


あの目の輝きは只事では無い。


「いや~ 変な事ではない……かな?」


「先輩、そこクエスチョンマークですか?

ちょっと怪しいですよ~

ほんとに大丈夫な事ですか~?」


「ちょっと待ってな、

さっきここに……」


そう言って先輩は自分の荷物をガサゴソと探った後、

僕がつい先ほどのぞき見した数々の物をずらっと目の前に並べた。


「それは……


羽?


それと…… 


チョコレート?


ハチミツに……クリームと苺?」


先輩は並べられたものを見直すと、照れてながら、


「あ~ 俺ってバカ~」


と言いながら、頭を抱えて布団に顔を埋めた。


「先ぱ~い、恥ずかしがらないで下さいよ~

僕が居たたまれないです~

僕だってお母さんにこれ、持たされたんですよ!」


そう言ってお母さんがくれたジェルとコンドームを出した。


先輩はそれを見て、更に真っ赤になりながら、


「お前の方が現実味があるな。

こっちはあまり考えて無かったというか、

やっぱり生はダメか……

あ、でも付けてる感覚無いのかな?

このコンドームのサイズ合うかな?

ジェルは……

なんだー このヌレヌレ・ヌーレとは。

ネーミングが笑えるのか笑えないのか……」


とブツブツ言いながら、更に


「あ~~~~~」


と言いながら布団に顔を深く埋めた。


何だかそんな先輩が凄く可愛かった。


先輩の肩をポンポンと叩いて、


「先輩、この苺食べるんですか?」


僕が尋ねると、埋めた顔を僕に向けて、


「いや、ロマンチックな一時と言ったら

苺にチョコシロップやクリームだろ?」


と言ったので、え~ そうなの?と思った。


「え~ それ何処情報ですか~?」


「いや、外国映画なんか見ると、

ロマンチック演出時は何時もベッドの上で苺でクリームや

チョコレートを救い上げて食べたり、

お互い食べさせたりしてるじゃないか。

そしてそのままゴニョゴニョ~」


と先輩の声が段々小さくなっていった。


「先輩、変なとこ研究してるんですね。

じゃあ、やっぱり蜂蜜は……」


「うん、お前に掛けて舐める!

舐めて、舐めて、舐めまくる!

勿論全身な!」


僕は想像してしまって、頭が爆発してしまった。


「え~~~!

本気ですか?!」


「ああ、やってみても良いか?

ずっと想像してたんだよ!

あ~~~~~~~」


とまた、布団に顔を埋めた。


「え~っ、

え~っっ、

え~っっっ!

イヤって言ってもやるんですよね?」


「ハハハ、出来れば同意してもらえると助かるんだが……」


先輩がどんどんしおらしくなってきた。

そんな先輩が愛おしくて、愛おしくて。


「で?

羽はどうするんですか?

なんだか、はたきみたいですね?」


「これはな、要の肌をなぞるために使うものだ。

ほらこうやって」


そう言って先輩は、その羽の先で、

僕の額や頬を軽く撫でてきた。


あ~ そうやって使う物だったんだ~


僕は目を閉じて、その感覚を感じた。


あ、気持ち良いかも?


「先輩、これ、気持ちいいです。


僕も先輩に試しても良いですか?」


そう言って羽を受け取ると、

先輩の顔をコチョコチョとし始めた。


先輩が僕の顔をジーっと見ていたので、


「先輩、ちゃんと目を閉じて下さいよ!」


とお願いした。


先輩の閉じた目を見ると、

やっぱりキリッとしていて男らしい。


僕は先輩の閉じた瞼の上や、

鼻筋、そして唇と羽を這わせた。


先輩はやっぱりくすぐったいだけだったのか、

ムズムすとし始め、唇を歪ませた。


僕はすっと先輩の唇に僕の唇を押し付け、

キスをした。


「お前、曲者だな」


「何ですか、曲者って」


「まあ、どちらかとも無くって言うのはあったけど、

明らかに、お前からキスしてくれるの初めてじゃないか?」


「だって、先輩のモゾモゾと動く唇見てたら、

居ても立っても居られなくて……!

先輩が悪いんですよ!

先輩の唇が!!!!!

あ~~~~~~っっっ!」


今度は僕が布団に顔を埋める番だった。


「ほら、羽、貸してみろ。

やっぱり俺がする!」


「先輩、僕的だとこれ、

少しくすぐったいんですが、ちょっと癖になっちゃいます。

気持ちいいんです~

フワフワとして、もっとしてって気持ちになります~」


「そうなのか?」


先輩はちょっと興奮した様にそう尋ねると、

暫くその羽の先で僕の顔で遊んだ後、

首筋の方へとそれを移動させた。


僕はやっぱり首筋が弱いみたい。

ピクッとして、ちょっと感じてしまった。


「アㇷ~」


と言う様なため息交じりの吐息がでた。


咄嗟にアッと思った瞬間、

先輩が僕の上に覆いかぶさって来た。


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