第102話 再度クラブ見学

佐々木先輩は僕がステージに座っている事にまだ

気付かないようだ。

まったく! 運命の番が聞いて呆れる!

僕の視線に気付いてよ!


そう思って、何て乙女なんだと自分でがっかりとした。


自己嫌悪している時、

マネージャーの声が聞こえてきた。


「今日はね、青木君のクラスメイトの

お友達が応援に来てるんだよ。

皆頑張ろうね!」


そういって、僕の方を指差した。

一気に先輩たちが僕の方を見たので、

ギョッとしたけど、僕は恐縮しながら、


「インハイ出場おめでとうございます。

青木君のクラスメイトで

赤城要と言います。

今日はお邪魔します~」


と言うと、


「うわ、何この子。

男子だよな?

可愛いな?

何? 青木のクラスメイトだって?」


と、いきなり僕の周りに集まって来た。

僕は佐々木先輩の顔が見れなかった。


どうしよう……

いきなり来て迷惑だったかな?

怒ってないかな?


と少し心配になって来た。


「うわ~ 触ってみろよ。

肌モチモチ。

赤城要って言ったっけ?


奇麗な男子が入学して来たって噂になった子だよな?

な、恋人居るの?」


「どれ、どれ? うわ~

ホントにスベスベ……

女の子の肌みたい。

俺、この子だったら男でも全然いけるわ~

君、彼氏欲しくない?」


と、先輩たちにホッペをベタベタ触られながら質問されると、

いきなり佐々木先輩が僕の前に立ちはばかって、


「触るな!」


と大声で怒鳴った。


僕も含め、僕の周りに居た先輩たちは、

皆佐々木先輩をびっくりするように見ていたけど、


「あ、いや……ほら……

折角見学に来てくれてるのに、

びっくりさせたら悪いだろ?


バレー部は変態ばかりって思われたくもないし、

な? な?」


と頑張って取り繕っていた姿に、

皆は呆気に取られて見ていたけど、

僕がクスっと笑ったのと同時に、

皆の緊張が解けて、


「そうだよな、佐々木の言うとおりだな」


と、何故か旨く収まっていた。


皆んなが散って、準備運動に取り掛かろうとした時、佐々木先輩がそっと僕に話しかけた。


「お前な~ 来るなら来るって

前もって連絡ぐらいしろよ~

いきなり来られると俺の心臓が持たないだろ」


「いや、僕も最初は来る気無かったんですよ~

でも気付いたらいつの間にか学校まで来てて、

青木君にばったり会ったんです」


そう返すと、


「今日は最後まで居れるのか?」


と聞く先輩に、


「迷惑でなければ……」


と返すと、


「1時には練習終るから、

その後何か食べに行こうぜ」


と先輩にランチに誘われた。


「あ、でも僕、お財布も何も持ってきてません」


「おごるよ」


「じゃあ、今日はお言葉に甘えて!」


そう言うと、マネージャーのホイッスルの合図で、

今日の練習が始まった。


「ねえ、さっき裕也君と話してたけど、

裕也君の事、知ってるの?」


マネージャーが尋ねてきた。


「あ、僕、美術部なんです。

矢野先輩を通して知り合ったんですが……」


「あ~ 矢野くんね。

確か裕也君と幼馴染なんだよね」


「そう聞いてます」


「さっき裕也君と親しそうに話してたから、

知り合いなのかなって思って」


「知り合いというか……

何と言うか……」


そう言い淀んでいると、


「ねえ、彼に彼女いるか聞いた事ある?」


と尋ねてきた。

僕は、その質問を投げかけられた時に

いつも返す返答をマネージャーの先輩にも同じように返した。


「佐々木先輩、婚約者が居るって聞いてるんですけど」


「あ~ あの○ッチの優香女王様ね」


彼女のそのセリフに僕は思わずブ~ッと噴出した。

余りにもその言葉がぴったりだと思ったからだ。

でも絶対に僕からはそうとは言えなかった。


「佐々木先輩の婚約者が長瀬先輩だって知ってるんですか?」


「そりゃあ、自分で言いふらしてたからね。

今までは誰が婚約者なのか分からなかったけど、

あれは多分牽制するつもりなんだろうね。

急にばらし始めてさ、危機感を持ったんじゃない?」


「危機感?」


「うん、今までは裕也君も、

恋愛には興味無さそうだったけど、

誰かの影がちらつき始めたみたいよ。

それが誰か分からないから、

牽制し始めた見たい。

そんな事したって何の意味も無いのにね。

あ~ でも裕也君にいきなり現れた影って誰なんだろう?

ねえ、矢野くんから何か聞いた事ない?」


「え? いや、 僕達あまりそう言う話はしないので……」


「そうよね~

男子って恋愛とかそう言う話はあまりしないよね。

やった話とかは結構するみたいだけど!」


「え? え? やった話?????」


「セックスよ! セックス。

それくらい知ってるでしょう?」


僕は彼女のあまりにもの大胆な話しぶりに、

度肝を抜かれてしまった。


「なあに? そんなに真っ赤になって。

今どき中学生だってセックスしてるわよ!

あなたまだ童貞なの?」


僕は何て返したらいいのか分からなかった。

まさかここでそのような話になるとは

思ってもいなかった。


僕が言葉を無くしていると、


「あなた、童貞と言うか、

抱かれる側の匂いがするのよね……」


と、核心をついて来る。


余りにものあっけらかんとした態度に、

皆こうなのかな?と疑問に思ってしまった。

そして変な想像をしてしまって、

顔がカーッと熱くなった。


もしかしてもう青木君と奥野さんも、もう?????


と思っていると、

バレー部のコーチがやって来た。


「あ~あ、 タヌキがやってきちゃった。

じゃあ、また後でね」


そう言ってマネージャーはコーチの所へ、

今日の練習の打ち合わせに行った。


僕は凄くドキドキした。

僕の周りにはああいう風に

性に対してあっけらかんと話す人は誰も居ない。


これって普通の事だろうか?


そしてチラッと佐々木先輩の方を見た。




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