第2話 不安と疑い

 友輝の帰りがいつもより遅い。もう夕方になる。そんなにガチで調べてくれてんのか。ありがたいけど心細い。と思っていたところに玄関の方から鍵が開く音がする。


「ただいま」

「おぉ、どうだった」

「んー、そうだな。とりあえずクラスに同じ通知が来てたやつはいなかった」

「おい、クラスのやつに話したのかよ」

「なんかまずかったか?」


 そりゃそうだろ。まず一兆円やるって通知を信じているようなやつは素直に言わなさそうだし、それに友輝が探りを入れたことでオレとの関わりが勘づかれたかもしれない。けど、そんなこと言ったらどれだけ気にしてんだよって言われそう。


「勇姫が調べろって言ったからさ」

「いや、そうだけど、学校には一応大人もいるだろ? そういうところから情報得るとかさ」

「ああ、なるほどね」


 なるほどねって。いやでもクラスのやつに聞く程度の調査ならそこまで時間かからないはず。なんだかんだ何か情報持って帰ったんじゃないか? ただとりあえず、これまた確証はないが通知はオレ以外には送られていない可能性が高まった。と一人、うなずいているときにケータイが震えた。


『こんばんは。わたしは魔王です。言い忘れましたが、今回のReal Playing Game!は数名の者しか参加していません』


 数名? ということはそもそもこの通知が送られてきたやつは数少ないということ? だから学校の連中には通知が届いていなかった? じゃあ逆に言えば他の誰かには届いているかもしれないってことか。もしくはこうやってオレを不安にさせることが狙いか?


「友輝、またこんな通知が来た」

「へえ。数名か」

「なんかリアクション薄くね」

「そうか? それよりリアルプレイングゲームの表記が変わってるな」


 ほんとだ。でもだからなんだ。いやちょっと待てよ。これで検索したら、前と何か検索結果が変わるんじゃないか? そう思って検索してみたら確かに結果が変わった。


 二十年くらい前に、マザーコンピュータが乗っ取られた事件があり、その際「Real Playing Game!」という言葉がテロップで使われたらしい。でもそれは二、三日で復旧した出来事で、それほど大きな混乱は見られなかった、というニュース。


 今回の通知を送ってきたのは、このことを知っている模倣犯もほうはんか? それとも同一犯か?


「勇姫、何かわかったか?」

「んあっ!? そうだな。過去に同じような変なイタズラはあったみたいだ」

「変なイタズラ?」

「うん……」

「へえ」


 今日の友輝の反応、なんか違和感あるな。いつもいい加減だけど、もうちょっと張り合いあるような。


「おい、友輝。友輝おい。お前もうちょっと情報ないんかい」

「そうだなぁ。強いて言うなら、交番に届けた方がいいかもな」

「はあ!? いや、そりゃそうかもしれんけど」


 やっぱ何か変だ。さてはこいつ、何か知り得たか? 今のオレが知らない情報を。それともオレがうたぐり深くなっているのか?


「ところで勇姫はさ、なんで家出したんだっけ」


 今度は何を言い出すんだ。

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