第4話 オレ=ぼく?

「ふぅ」

ㅤおにぎりを食べて体力が回復したのを感じる。それと同時に、何だか気づいたことがある。前から薄々感じていたことでもある。


ㅤぼくは時々、自分のことオレって言っていないか?


ㅤそれはまぁいいとしても、誰かのピンチでとっさに勇敢な行動をとるとき、人格が変わるというか。コンビニのときもそうだったし、今もそうだった。


ㅤこれは二重人格ってやつなのか。どっちが本当のぼくなんだろう。それとも、どっちも本当なのか。


「ねぇ」


ㅤそれにしても、ろくにあきひめちゃんと会話もできないようなぼくに、こんな秘めた力があったとは。もしかして、あきひめちゃんがピンチになったから目覚めた能力?ㅤだとしたら、あきひめちゃんの元にたどり着き、実際にピンチな姿を目の当たりにすれば、あんなに難しかった告白もとっさにできるんじゃないかな。


「ねぇってば」


ㅤでもなぁ。あの人格がずっと続くわけじゃないみたいだし、そんな状態で告白してもしょうがないっていうか。だけどそんなこと言っていたらいつまでも話が進まなさそうだし。どっちみち気持ちは同じなんだったら、どっちが告白しようと……


「おい!!!」

ㅤその叫び声に気づいたときには、少年はゴホゴホとせきをしていた。のどに負担がかかったのか。

「あ、ごめん」

「もう食べ終わってるのに無言でにやにやしたり、むって顔したり変なんだから」

「ごめんごめん。じゃあ」


ㅤ少年を交番へ届けに行く

→家に帰る


「じゃあね」

「えっ、ちょっと待ってよ。帰り道わかんないって言ったじゃん」


ㅤそれもそうだ。どうしてぼくは急にこんないじわるなことをしたんだろう。まさか、第三の人格?ㅤというのは置いておいて、また一つわかったことがある。今のぼくには選択肢があるようで、あまりないってこと。今はこの子をとりあえず交番へ届けに行こう。


「そういえば、名前はなんていうの」

ㅤ少年やこの子と思い続けても、名前のないキャラクターと相手し続けているみたいなので、聞いてみた。


「教えない」

「えっ、でも住所調べるにしても名前がわかったほうがいいと思うんだけど」

「でも知らない人には教えたらダメってお兄ちゃんが」


ㅤあんなことしておいて、そんなところは守るのか!ㅤまぁいっか。


「ぼくは佐藤勇。これでいい?」

「おれは安藤時止あんどうときと。これでいい?」


ㅤ何か生意気だな。でもちょっと笑ってしまった。


ㅤ思えば昨日は疲れていた。いつもの情けない一日が過ぎて、それからよくわからないことが起きて。それでご飯を買いに出かけただけなのに、コンビニ強盗と戦ったり、見知らぬ少年を助けたり。


ㅤ不思議な冒険の主人公になったみたい。


「じゃあ、ときと。ぼくについてきて」

「うん。ところでいさむ、さっきからぼくってなに」

「ぼく?ㅤぼくはオレのことだよ」


——安藤ときとが仲間になった!ㅤ目的地に交番が追加された。

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