教祖様の苦悩 躍進③
か、神棚にフィギュアを安置していた事がバレてる!!?
「そ、そんな事が……。ありがとうございます。きっと、他の邪教徒が神興会の妨害をする為、その様な事を仕出かしたのでしょう」
あ、危なかった。
まさか神棚の中を見られていたとは……。
神棚の中を見たのが屋敷神さん以外であれば大変な事になっていた所だ。
まあいい。神興会の秘め事の一つである御神体問題。
それが、知らず知らずの内に解決したのはありがたい。
流石は財前さんの雇ったボディーガード。初日からいい仕事をしてくれる。
「……左様でございますか。まあ、その話はおいておきましょう。それでは、絵空代表との会談に向かいます」
屋敷神さんがそう言うと、ハイヤーが動き始める。
正直、野党の大物議員と何を話せばいいのか、まるで分らない。
原稿に視線を向けた私は、憂鬱な気持ちで国民政党の絵空代表の待つ事務所に向かう事になった。
◇◆◇
一方、その頃の悠斗はというと……。
「げっ……。な、なんで屋敷神がこの世界に……」
ち、ちょっと、長い時間、この世界に留まり過ぎただろうか?
もしかして、それが原因で迎えに来たとか??
でも、それならなんで教祖様に付き添っているのか理解できない。
神興会の教祖様と車でどこかに向かった様だし、これからどうしよう。
屋敷神が教祖様と一緒にいる以上、下手な行動はできない。
かといって、教祖様からは、青年部長という大役を命じられているし……。
「俺は一体、どうすればいいんだぁ~!」
そう頭を抱えて悩んでいると、黒塗りの怪しい車が教祖様の車を尾行している事に気付く。
「あ、あれは……」
そういえば、最近、教祖様の付近で怪しい動きをする人達が増えていると財前さんがぼやいていた様な気がする。
もしかして、あの車に乗る人……。教祖様に危害を加える気じゃ……。
心配になった俺は神化した時に得たスキル『先読』で教祖様の未来を覗き視る。すると、黒塗りの怪しい車が教祖様の乗る車に突っ込んでいく場面が視えた。
中にいる教祖様と運転手は屋敷神が護るので全く問題ないが、その後が悲惨だ。
教祖様の乗っていた車と、黒塗りの怪しい車が衝突した事による玉突き事故。
これにより、数多くの負傷者が出る未来が視える。
「これは拙い……」
屋敷神は、俺や俺の関係者以外には、対応がおざなりな印象がある。
どんな理由で教祖様と一緒の車に乗っているのかはわからないけど、このまま放置しておけば大事故に繋がってしまう。
俺は、黒塗りの怪しい車に向かって、手の平を向けると二台の車を『影収納』に収めた。
「さて、取り敢えず、『影収納』に収めてみたものの、これからどうしようかな……?」
一応、人があまりいない所で、二台の車を『影収納』に収めたけど……。そもそも、なんでこの人達は教祖様を襲おうとしたんだろう?
取り敢えず、中にいる人達と話をしてみようかな?
そう考えた俺は、周囲を見渡し誰もいない事を確認すると『影収納』の中に入り込んだ。
◇◆◇
『影収納』の中では、突然暗闇に放り込まれた暴力団員は軽いパニックに見舞われていた。
「おい。これはどういう事だ? 一体、何が起こった?」
「わ、わかりません。先ほどまで神興会の教祖の乗った車を追いかけていたんですが……」
「おいおい。わかりませんじゃねーだろ……。俺達は顕蓮会の教義に反した行いをする狂祖に制裁を下す為にここにいるんだろ? その狂祖を見逃してどうするよ」
運転手が座るカーシートを後ろから蹴り飛ばすと、運転手がビクりと身体を震わせた。
「……す、すいません!」
「あ? ……まあいい。まずは現状を把握しねーとな。取り敢えず、ライトを点けろ。こうも真っ暗じゃあ、辺りが見えやしねぇ」
「は、はい! わかりました!」
そう言うと、運転手が車のライトを点ける。
車内からライトが照らす方向に視線を向けるも、何も見えない。
まるで底の見えない井戸の中に光を照らすかのように、光が霧散していく。
「……どうなっていやがる」
本当にどうなっているんだ?
先程まで駐車場にいた筈。それが瞬きをした瞬間、闇の中。
意味がわからない……。
「スマホはどうだ? 電波は通じるか?」
運転手にそう尋ねると、運転手はポケットからスマホを取り出す。
「け、圏外です……」
「そうか……。んっ?」
今、何かが横ぎった様な……。気のせいか?
フロントガラスに視線を向けると、ヘッドライトを遮る様に黒い影が近付いてきている事に気付いた。
視線を外さず、紙袋に入れた拳銃を手に取るとフロントガラスに向かって構える。
「……おい。運転手。ハイビームにしろ」
「は、はいっ!」
運転手がヘッドライトをロービームからハイビームに切り替えると、黒い人型のナニカが現れる。
「!!?」
突然現れた黒い人型のナニカ。
驚きフロントガラス越しに発砲するも効いている様には見えない。
「な、なんだとっ? うっ!?」
「う、うわぁぁぁぁ!」
拳銃が効かず、驚愕の表情を浮かべていると、運転手が黒い人型のナニカに向かって車を急発進させた。
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