ヴォーアル迷宮攻略⑬

 俺が迷宮核に手を触れようとすると、ロキさんが声をかけてくる。


「いやいやいや♪ まずは宝箱を開けようよ~♪」

「えっ? ああ、そういえばそうだね」


 迷宮核に魔力を流し込む事に気が向いていた。

 宝箱に視線を向けると、念の為〔鑑定〕をかける事にした。


 宝箱に〔鑑定〕をかけると、このように表示された。


 --------------------------------------

 宝箱

 効果:なし

 説明:迷宮の最下層にある宝箱。強力なアイテムや、レアな素材が収められている。

 --------------------------------------


 宝箱に〔鑑定〕をかけてみたけど、どうやらこの宝箱にトラップは付いていないらしい。

 宝箱を開けると、そこには一冊のスキルブックが収められていた。


「おお、スキルブックだね~♪ これは勿論、悠斗様が使うんでしょ?」

「うん。まあそうなるかな?」


 フェイやレイン、ケイには自衛用としてスキルブックを渡してある。

 折角だし、スキルブックを使って新しいスキルを手に入れるとしよう。


 俺が宝箱からスキルブックを取り出そうとすると、ロキさんが話しかけてくる。


「悠斗様~♪ そのスキルブック、ボクに一度貸してくれない?」

「えっ? このスキルブックを?」

「うん♪ そのスキルブックをだよ~♪ 大丈夫、大丈夫♪ 悪い様にしないからさ♪」

「まあ、いいけど……はい」


 俺は宝箱からスキルブックを取り出すと、ロキさんに手渡した。

 スキルブックを手にしたロキさんは満面の笑みを浮かべている。


「ありがと♪ そういえば悠斗様のレベル、今回の迷宮攻略でどの位上がったのかな?」

「うん? レベル?」


 そういえば、第71階層の時は94レベルだった様な……。

 とはいえ、第73階層以降は雑魚モンスターしか現れなかったし、そんなにレベルが上がっているとは思えない。


「一応見てみようよ♪」

「うん。まあ、そうだね?」


 ステータスを確認すると、次のように表示された。


 --------------------------------------

 佐藤悠斗 Lv:96

 年齢:15歳

 性別:男

 種族:人族

 STR(物理):4000  DEX(器用):9999

 ATK(攻撃):4000  AGI(素早):6000

 VIT(生命):8200  RES(抵抗):9999

 DEF(防御):9000  LUK(幸運):100(MAX)

 MAG(魔力):9999  INT(知力):9999

 ???(????):4000


 ユニークスキル:言語理解Lv:-・影魔法Lv:-・召喚Lv:-

 スキル:鑑定Lv:-、属性魔法Lv:-、生活魔法Lv:8

 --------------------------------------


「げっ!?」


 レベルが2も上がってる!?

 レベル上限を超えると、レベルという概念から解放されて人が人じゃなくなるんじゃなかったっけ?


「それで、何レベルになったの?」

「96レベル……」

「96レベルかぁ♪ レベル100まであと4レベルだね~♪」

「そ、そうだね……」


 ロキさんは嬉しそうに言っているけど、全然、嬉しくない。

 調子に乗って草原フィールドにいるモンスターを影収納に収めていたら、とんでもない事になってしまった。


『それよりロキ、そのスキルブックを悠斗様から借りてどうするんだ?』

『ふふふっ♪ それはねぇ~♪ 〔秩序破り〕……これで良しっと♪』

『ああ、なるほどな……』


 俺が少しだけ気落ちしていると、ロキさんがスキルブックを手渡してきた。


「悠斗様~♪ スキルブックを貸してくれてありがとう♪ 早速、このスキルブックを使ってみて♪」

「えっ? 今使うの?」


 まあ別にいいけど……。


 ロキさんからスキルブックを受け取ると、スキルブックをパラパラと本を捲る。

 するとスキルブックが光り出し、脳内にアナウンスが流れた。


『ユニークスキル〔限界突破〕を取得しました』


「はっ!?」


 思わずスキルブックを手から落とすと、地面に落ちたスキルブックが粒子となって消えていく。

 俺が〔鑑定〕で取得したばかりのユニークスキル〔限界突破〕を調べて見ると、〔限界突破〕の詳細がステータスに浮かび上がる。

 --------------------------------------

 ユニークスキル:限界突破


 この世界に設定されたレベル、ステータス、スキル上限がなくなる。

 --------------------------------------


「悠斗様ぁ~♪ 今、どんなスキルを手に入れたの?」

「えっ? なんだか〔限界突破〕って言うユニークスキルを取得したみたいなんだけど……」


 ユニークスキル、限界突破を取得した事を話すとロキさんとカマエルさんが笑顔を浮かべた。


「そっかぁ♪ 良かったね、悠斗様♪」

「限界突破なんてユニークスキル、中々、手に入れる事ができないぞ。おめでとう。悠斗様」

「あ、ありがとう……」


 ぜ、全然嬉しくない。

 どう考えてもこの限界突破のユニークスキル、レベル上限を超える為のスキルにしか思えない。

 なんでまたこんなユニークスキルがこのタイミングで……。

 悉くLUK(幸運)値に見放されている気がする。


「はあっ……」


 俺は大きなため息を吐いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る