ヴォーアル迷宮攻略⑫
「それで、何かいい案はないかな?」
俺がそう呟くと、ロキさんが意気揚々と手を上げる。
「悠斗様~♪ ボクに名案があるよ~♪」
「名案?」
「そう、名案さっ♪ 第70階層のボスモンスター、死の天使をボクの娘、
ロキさんの娘、死神が第70階層のボスモンスター、死の天使を捕獲しヘルヘイムに連れ去った時の事を思い出す。
なる程、その方法なら簡単に第80階層のボスモンスター、フギンとムニンを連れ出す事が出来そうだ。
それに元々、この迷宮を攻略したらヴォーアル迷宮自体を造り替えるつもりだから、別に現ボスモンスターのフギンとムニンを迷宮外に連れ出しても問題ない。
造り替える際に、新たなボスモンスターが設置される事になるだろう。
というより、〔影転移〕を使えば、フギンとムニンを簡単に連れ出す事ができた気がする。
なんで気付かなかったんだろう?
まあいいか……。
「よし、その案で行こう!」
俺がそう言うとロキさんが笑顔を向けてくる。
「やった~! それじゃあ、ボクに対する罰は軽くなるんだね♪」
「えっ、それでは私は……」
勿論、フギンとムニンを倒さず連れ出す事が出来るなら、約束は守るつもりである。
案を先に出す事の出来なかったカマエルさんは……どうしようか考え中だ。なんだか、呆然とした表情を浮かべているが強く生きてほしい。
「勿論さ。約束だからね」
「よ~し、それじゃあ、早速、神獣召喚でボクの子供達を呼び出すね〔
ロキさんがそう言うと、手足に鎖を付けた巨大な
「この子は
「うん。それじゃあ早速、フギンとムニンをロキさんの階層に送り届けて貰ってもいいかな?」
「勿論だよ♪ それじゃあ、フギンとムニンを神狼の背中に留まらせて〜♪」
「うん。さあフギンとムニン、神狼の背に留まって」
俺がフギンとムニンの頭を撫でながらそう呟くと、フギンとムニンは「カァー」と鳴き声をあげ、神狼の背に留まった。
流石は神鳥、神狼を目の前にしてこの余裕である。
俺がフギンとムニンの立場であれば、尻込みしている所だ。胆力がまるで違う。
「それじゃあ、神狼。フギンとムニンをよろしくね♪ 丁重に送り届けるんだよ~」
ロキさんがそう言いながら、神狼の顎下をさすると、神狼は気持ちのいい鳴き声をあげながら、ロキさんの階層へと戻っていった。
第80階層のボスモンスター、フギンとムニンが神狼に連れられ迷宮内から出た事により、迷宮核のある第81階層へと続く扉が開かれた。
「よし。それじゃあ、迷宮核のある階層に向かおうか」
「うんっ♪ でもその前に、悠斗様はボクに対する罰をどう軽減してくれるの~?」
「うん? そうだね~どうしようかな……」
墓地フィールドを迷宮出禁の意趣返しとして歩かされた事も、その時の怖い記憶を屋敷神や土地神にバレない様に消した事もラストフロアを攻略した今となっては、別に何とも思っていない。
ただ、屋敷神と土地神に追加で罰を与えられない為にも、ある程度の罰を与える事は必要だ。
「それじゃあ、ソテルさん行きは無しにしようか、俺がヴォーアル迷宮の迷宮核に魔力を流し込んでいる間の護衛をお願い。ヴォーアル迷宮を手中に収める迄、数日掛りで魔力を放出しなきゃいけないと思うんだ。第81階層だから問題ないかもしれないけど、念の為、お願いね」
「ほ、本当にっ!? 本当にそれだけでいいの!? ありがと~♪」
「ああ、迷宮核に魔力を流し込んでいる間の守護は任せておけ!」
そんなにソテルさんの下に行きたくなかったのだろうか?
別に一週間の謹慎がなくなった訳じゃないんだけど……まあいいか。
王都を迷宮の支配下に置く時も数日かかった。
恐らく今回もその位の日数かかる筈だ。
それに、一週間の謹慎に、罰という名の護衛任務を与えておけば屋敷神や土地神に対してある程度のいい訳ができるだろうし、屋敷神と土地神には甘いと言われるかもしれないけど、ロキさんとカマエルさんはイザという時には、ちゃんと助けてくれる神様と大天使だ。
それに長い期間、階層への立入を禁止した事で、また何か問題を起こされても困ってしまう。
それならば、いっその事、短い期間の謹慎と護衛任務を与え、反省を促した方が結果として被害が少なくなると判断した。
「それじゃあ、改めて迷宮核のある階層に向かおうか」
「うんうん♪ 早速向かおう♪」
「そうだな、サッサと迷宮核に魔力を流し込み、迷宮を悠斗様の物に造り替えてしまおう。所でその謹慎とやらは今日から開始という事でいいんだよな?」
「うん。できる限り早めに支配するよう頑張るね」
俺はそう呟くと、迷宮核のある第81階層へと向かった。
ヴォーアル迷宮第81階層の階段を降りると、八畳一魔位のこじんまりとした部屋に辿り着く。
部屋の奥には、宝箱と光り輝く水晶のような球体が台座に置かれていた。
俺は収納指輪から万能薬を取り出すと、迷宮核のある台座の下に置いていく。
少なくとも、万能薬を飲めば二十四時間休まず魔力を流す事ができる。
「さて、これで準備ができた。さあやりますかっ!」
そう呟くと、ロキさんとカマエルさんが見守る中、俺は迷宮核に視線を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます