評議員トゥルクのカジノ①

午後5時。

ユートピア商会エストゥロイ支部の閉店時間である。


「本日の営業は終了致しました。またのお越しをお待ちしております」


そんなアナウンスを流すと、最後のお客様を送り出し商会の扉を閉める。


「皆さん。本日はお疲れ様でした!」


「「「お疲れ様でした!」」」


従業員達に向かってそう声をかけると、売上集計をした紙を持って土地神が話しかけてくる。


「悠斗様。こちらが本日の売上となります」


「ああ、ありがとう」


ユートピア商会エストゥロイ支部のオープン初日の売上は次の通りだった。


----------------------------------------

 ・生鮮食品:白金貨100枚(約1,000万円)

 ・インテリア:白金貨500枚(約5,000万円)

 ・武器防具:白金貨100枚(約1,000万円)

 ・建築資材:白金貨100枚(約1,000万円)

 ・累計:白金貨800枚(約8,000万円)

 --------------------------------------


王都のユートピア商会で販売していた冷蔵庫や照明器具が思いの外多く売れたお陰で、インテリア部門では白金貨500枚もの売上を達成している。

他にも生鮮食品部門で販売されていたオストリッチの卵やフェニックスの肉が大盛況。開店してすぐに売り切れてしまった。


明日は少し多めに用意しておいた方がいいかもしれない。


従業員達の接客態度も悪くなかったし、これなら彼らに営業を任せても良さそうだ。

ユートピア商会エストゥロイ支部閉店後、従業員達と共に食事を摂ると邸宅でゆっくりと眠りについた。


翌日、予てから予定のあった俺は、ユートピア商会エストゥロイ支部の接客を従業員達に任せると、王都の従業員達と共にフェロー王国内最大のカジノ〔トゥルクのカジノ〕へと向かう事にした。


カジノとは、スロットやカードゲーム、ルーレット等を備えた施設である。商人連合国アキンドの評議員トゥルクの運営する商会ではカジノ経営も行っている様だ。


「ふへー。ここがカジノですか。生まれて初めて来ましたよ」


安心してほしい。俺も初めてだ。

なんならゲームセンターのメダルゲームコーナーでしか遊んだ事がない。


「カジノって初めて入ったけど、ホント凄いところだね」


何というか……。カジュアルながら落ち着きのある空間だ。客層も紳士的な紳士や貴婦人しかいない。


「悠斗様! 早速ゲームを楽しみましょう!」


「いいね。どのゲームからやろうか?」


正直、カジノなんて初めてでイマイチ勝手がわからない。ここは従業員達に全力で乗っかろう。


「じゃあこのスロットゲームなんてどうですか?」


スロットゲームか。それならゲームセンターで遊んだ事がある。早速やって見よう。


「へへっ、それじゃあまず俺から……」


従業員オスロがスロットにチップを投入し、レバーを引くと絵柄の付いたスロットが回り始める。そして俺達が真っ直ぐリールに視線を向けると、テンポ良くスロットが止まっていく。


カジノのスロットゲームとは全然違う様だ。

しかし……。


「す、凄い! あと一つ同じ絵柄なら大当たりだよ!」


興奮しながらスロットに視線を向けると、最後のスロットが止まり落胆の声があがった。


「「「あああああー!!!」」」


「惜しい! 惜しかったよ!」


流石に一発目から大当たりを引くのは難しい様だ。

しかし、よくできている。


「もう一回だ! もう一回!!」


もう少しで当たりそう。でも当たらない。

こうしてカジノで身を滅ぼす者が量産されていく訳か……。


「悠斗様。私はこれをやろうと思うのですが一緒にやりませんか?」


そういって従業員のマセラさんが指さしたのはブラックジャック。

カジノディーラーとプレイヤーとの対戦型ゲームで、プレイヤーはカジノディーラーよりも『カードの合計が21点』に近ければ勝利。配当を得る事ができる。


ただし、注意が必要だ。


「あ~! くそっ! 21点を超えちまった!」


あそこで遊んでいる従業員のコソボさんの様に、プレイヤーのカードの合計が21点を超えるとその時点で負けになってしまう。


因みに、最初に配られた2枚のカードが、A札と10点札で21点が完成した場合をブラックジャックといい、その時点で勝ちとなる。ただし、カジノディーラーもブラックジャックだった場合は引き分けとなるらしい。


俺達は早速卓に座ると、カジノディーラーが「プレイスユアベット(賭けて下さい)」と言ってくる。

収納指輪から白金貨10枚相当のチップを取り出し、オリジナルベットに全額を賭けるとカジノディーラーが「ノーモアベット(締切です)」と呟いた。


何だかカッコいい。


ベットを締切ったディーラーがカードを表向きに2枚ずつ配ると引き攣った笑みを見せる。


「21点……。悠斗様! ブラックジャックですよ!」


LUK(幸運)がこんな所で力を発揮するとは思いもしなかった。


最後にディーラーがカードを捲るとディーラーのカードの合計は18点。

そして、同じく白金貨1枚相当のチップを賭けたマセラさんもカードの合計が19点とディーラーに勝利。

賭け金を1.5倍にする事に成功した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る