馬車での話し合い
それにしても、なんで王都みたいな地価の高そうなところに製紙工場を建てたんだろ?
それこそ、地価の安そうなところなんていくらでもありそうだけど……。
「リマさんはなんで王都に製紙工場を建てたんでしょうか? 地価も高そうですし、あまりメリットがないような……。」
マスカットは『ふむ』と顎をなぞり口を開く。
「そうでもないぞ? フェロー王国の政治・経済の中心は王都だ。王都には人も集まるし、紙は王城や商人も使用している。それこそ紙を使う頻度も高い。つまり消費人口が多いエリアに製紙工場を建てることは理に適っている。それに1枚1枚は軽い紙でも束になるととんでもない重さになるからな。」
なるほど、確かに紙を束ねると結構な重さになる。
重いものを運ぶのは大変なことだ。特にこの世界、ウェークでは元いた世界にあった車や飛行機などは存在していない。
流通の事を考えたら消費人口が多いエリアに工場を建てた方がいいに決まっている。
「なるほど、それでリマさんは王都に製紙工場を建てていたんですね。そういえば、製紙工場の値段をまだ聞いていませんでしたが、いくら位で購入できるんですか?」
既に製紙工場が欲しい旨は伝えてあるが、金額を聞いていなかった。
莫大な資産を持つ悠斗と言えど、金額の記載していない空手形を渡すようなことはしたくない。
「白金貨60,000枚(約60億円)でどうだ? もちろんこの金額には製紙工場の土地建物、機械設備の引き渡し、アキンド紙の流通経路の確保も含まれている。それにリマの製紙工場は他の国にもある。そのすべてを白金貨60,000枚で売り渡そう。」
流通経路の確保までやってくれるとは、お買い得じゃないだろうか?
「わかりました。すぐに支払うことができますがどうしますか?」
「そんなポンと出すような金額ではないんだが……。い、いやわかった。それでは、馬車の行き先を商業ギルドに変更するからそこで契約を交わそう。」
そういうと、マスカットは御者に行き先の変更を告げると、真剣な顔で悠斗と向き合う。
「悠斗には申し訳ないが、製紙工場で働いている人々については引き続き雇用して貰えないだろうか?」
えっ? 全然問題ないんだけど。むしろ製紙工場を運営してきた従業員さんたちにいなくなられて困るのはこちらの方だ。
「え? はい。全然問題ありませんよ?」
マスカットは安心したような表情で頷く。
「でも、給与面の待遇改善や紙の原材料の仕入先の変更なんかはしても大丈夫ですよね? ユートピア商会の一部になるわけですし……。」
「もちろんだ。」
その後、少しの歓談をしていると、話はリマと商業ギルドの話しに移っていった。
「そういえば、リマさんは今後、どうなるんですか?」
「うむ。リマはフェロー王国で罰せられた後、犯罪奴隷としてハメッドの元に移送される予定だ。勿論、支援金を支払わなければならないから資産のほとんどを没収した状態での移送ということになるだろう。そして、商業ギルドについてだが、リマの組織した裏組織は解体……というより今となっては本当に存在したかわからないがな。」
リマさんの組織した裏組織のメンバー60人はすべて迷宮で働いて貰っている……が、その一方、マスカット会頭たちにはユートピア商会を襲いに来た賊は逃げ帰ったと伝えている。
「早く捕まってほしいですね。」
悠斗は白々しくマスカットへそう返答する。
「う、うむ。しかし、盗賊を鮮やかに捕える悠斗の実力から、賊を逃がしたことに違和感を感じるのだが……。」
どうやらマスカットは納得していないばかりか、少し疑念を抱いている様だ。
「まあ賊を追い払ったのは、使用人と従業員たちですからね。仕方がありませんよ。」
「そうか……、悠斗が到着した頃にはすでに賊はいなくなっていたというし仕方ないか……。」
悠斗は話題を変えるべく、商業ギルドの今後の運営について聞いてみた。
「そういえば、リマさんが統括していたフェロー王国の商業ギルド運営はどうするんですか?」
「うむ。商人連合国アキンドの評議員が1名欠員となってしまったからな。取りあえず、暫定処置として私がフェロー王国の商業ギルドを運営することになる。まずは人材確保と待遇改善から始めねばならんな。そして今回の件は、誰かに責任を取ってもらわなくてはならない。そのため、商業ギルドの上層部はすべて入れ替える予定だ。」
「商業ギルドの上層部は全員、解雇ということですか?」
マスカットは首を振り否定する。
「いや、ただでさえ少ないギルド職員をこれ以上減らすわけにはいかん。今の上層部をすべて降格処分とし、新たにアキンドから人材を派遣する予定だ。まあ人材が派遣されるまでの間は現状のままギルド運営を行うことになる。」
それならよかった……のかな?
ギルドマスターのミクロさんをはじめとした、王都商業ギルドの上層部は降格処分になるだろうけど、マスカット会頭により待遇改善がされるとのことだ。給与面や福利厚生面も今よりいい待遇となるだろう。
こちらとしては
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