XX~2回目
気がつくと、俺は自分の部屋のベッドの上にいた。
「はぁ、はぁ、まただ」
終わりの見えないような、形容しがたい苦痛から解放され、俺は安堵の息をついた。
俺の名前は
年齢32歳。好きな女のタイプはスレンダー巨乳。
職業は……いやそんなことはどうでもいい。
俺には悩みがある。
最近髪が薄くなってきたとか、下っ腹が膨れてきたとか、そんなくだらない悩みじゃあない。
信じてもらえないかもしれないが、俺は誰かに殺され続けてるんだ。
もうどれくらい殺されたのかは覚えていない。
一日に何度も殺されることもあれば、数日空くこともある。
そいつは突然やってきて、俺を殺すんだ。飯を食っているとき、トイレに閉じこもっているとき、仕事をしているとき、女と遊んでいるとき……
時間と場所を選ばずに、そいつは、俺を殺していくんだ。
死ぬことは、それはもうとてつもなく痛い。全身が爆発したような感覚と言えばいいだろうか。なにせ誰も俺の言葉を信じてくれないもんで、どう説明すればいいかわからないんだ。
* * *
「それで、相談ってなんだよ」
家の近くのカフェである。
面倒くさそうな顔をしながらも、
宮本とは高校時代に同じ野球部に所属していた仲で、俺がピッチャー、宮本がキャッチャーでバッテリーを組んでいた。まあ二軍だが。
「実はな」と話し始めるが、案の定、宮本は信じなかった。
「夢だろ」
「違うんだって。本当なんだ。本当に俺は殺され続けてるんだ」
「じゃあ、なんで生きてんだよ」
「そのくだりはさっきさんざんやったあとなんだよ」
「ああ、わかったわかった。目立つから立つんじゃあない。ひとまずお前自身の認識通りに状況を整理しよう。お前は正体の分からない殺人鬼に追い回されていて、突然そいつに殺される」
「そうだ」
「そして気がつくと自分のベッドの上にいる」
「そうだ」
「死の感覚は本物で、激しい苦痛を伴う」
「その通り」
さすがは宮本。頭の固いポリ公とは違うぜ。
「夢だろ」
「こら」
「お前の言っていることを客観的に分析して、つじつまの合うように並べ替えると、夢を見てるとしか考えられない。それか……」
「それか?」
「いや、なんでもない。ところでお前、最近痩せたんじゃないか? 顔色も悪いぜ」
「きっと殺され続けるストレスのせいだ」
「それにしては晴れ晴れとしてやがる。目もなんだか……そういやお前、仕事辞めたんだってな」
「こんな状態じゃ仕事にならないからな」
「……」
「なんだよ」
「いや、何も」
そう言う宮本の顔には、疑心の色が窺えた。
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