第15話 幽霊は怖い?
「お待たせ。約束通り来たぞ」
「いらっしゃい、真島くん……えっと……この方は?」
真島くんは一人じゃなかった。
きれいな女の人。大人の人を連れてきている。
「普通の家か……古民家か古い洋館かと思ったのに」
どういうこと?
誰? 彼女さん?
確かに、デートだとは言われてないし、一人で来るとも聞いてない。でも、よりによって彼女連れなの?
イチゴのケーキを用意したんだけど……。
別に何か期待したわけじゃないけど……。
でも、一人で来るんじゃなかったのか……。
「うちの姉貴。こういうの詳しいんで、連れてきた」
「お姉さん?」
なんだ、お姉さんか……。
改めて見る。
ショートカットで目が大きい。真島くんと少し似てる。
タンクトップにデニムのショートパンツ。夏らしいさっぱりした服装だ。
美人だけど、なんか男らしい。そんな雰囲気。
「博人の姉の真島冬美です。大学でオカルト研究サークルに入ってます」
「オカルト? 幽霊とか詳しいのですか?」
「幽霊はあんまりかな? どちらかというと、ゾンビ系。あと、吸血鬼系も好き」
「はあ……」
私は無理だ。
ゾンビ映画とか絶対に見れない。
「あなたがまきちゃんね。今度の彼女は、かわいい系なんだね、博人」
「か、彼女? かわいい?」
え? なに? 何が起こった?
「馬鹿姉貴! そんなんじゃない。里山とはそういう関係じゃない。ただのクラスメイト」
びっくりした。
一瞬、彼女だと思われているのかと勘違いしてしまった。
そんなわけないか。
真島くん、それはそうだよ。合ってるよ。
でも、そんなに否定しなくても。
「おいおい、弟よ。『ただのクラスメイト』は冷たいんじゃないの? まきちゃん、がっかりしてるよ」
まじ? バレてた? そんな顔してたの?
「そ、そんなことないです。本当のことですから」
「ほら、ちょっと落ち込んでるじゃない」
え? 落ち込んでる? そんな風に見えてた?
「やめろ。もう、里山をからかうな。そんなことのために連れてきたんじゃないんだからな」
なんだ、からかわれていたのか。びっくりした。
「そんなに怒るなよ。彼女が大変だって言うから、こうして協力しに来てるんだから」
協力?
「里山、ごめんな。馬鹿姉貴で」
「ううん。あ、どうぞ上がってください」
冬美さん、ちょっと苦手かも……。
ケーキを余分に買ってきて良かった。
ユウちゃんは食べられないから、三人分。飲み物の好み、聞いた方が良かったか? まあ、いいや、とりあえずオレンジジュースを用意して、他のが良かったらその時に。
部屋に入ると、姉弟そろってキョロキョロしている。
やっぱり、ユウちゃんは見えてないようだ。
目の前を通っても、気付いてない。
おぼんの上のものを、机に並べる。
「よかったら、どうぞ」
「おお」
「おかまいなく」
部屋に誰かを入れたのは、初めてだ。
恥ずかしい。
「まきちゃん、この女、誰よ?」
ユウちゃんが冬美さんを指さす。
顔が怖いよ。怒ってる?
「真島くんのお姉さんだよ。冬美さん。幽霊に詳しいんだって」
「なんだ、お姉さんか。まきちゃんの恋のライバルかと思った」
ああ、それで怒ってくれてたのね。
「じゃあ、こっちが真島くん?」
ユウちゃんが、真島くんのとなりにきて、顔を覗き込む。
「そうだよ、真島博人くん」
「おお、イケメンさんだ……あれ? ヒロトくん? もしかして、まきちゃん、ぬいぐるみの名前、真島くんの名前なの?」
やばい。バレた。
「いや、その、あの……」
「それで、よく抱きついてたんだ」
「ユウちゃん、駄目! それは言わないで」
え?
真島くんと冬美さんが部屋の隅に駆け込んだ。
手を取り合ってしゃがみ込む。
二人とも、目を大きく開けて、さらにキョロキョロ。
脅えてるようだ。
しまった。
普通にユウちゃんと会話してしまった。
「まじで? もう、いるのか?」
「全然見えないけど? 声も聞こえないんですけど?」
二人とも、声が上ずっている。
やってしまった。
もう少し、段階を踏んで紹介すべきだった。
ユウちゃんを見る。
頭をかいて、苦笑いをしていた。
真島くんも冬美さんも、堂々としていたから、幽霊とか怖くない人なのかと思っていた。
そうでもないようだ。
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