目標を探して


 俺たちが不在の間、エミルの屋敷を管理してくれる人員も確保できた……。これにて旅支度は一先ず終了だな。


「あとは……旅の第一目標を決めないとな。」


 最初に目指す目標となる食材はみんなで決めるとして、候補となるような食材に当たりはつけておかないとな。


「聞き込みをするとしたら……やっぱりあそこかな。」


 王宮を後にして俺は市場の方へと向かい、ミルタさんのお店へと向かう。この世の珍しくて美味しい食材のことなら、きっとミルタさんが何かしら情報を持っているはずだ。


 ミルタ商会の獣人国支店にお邪魔してみると、ちょうどミルタさんが社員の人達と話している最中だった。


「おや、ヒイラギさんようこそいらっしゃいました。」


「すみません、なんかお取込み中だったみたいで。」


「いえいえ、お構いなく。それで何用でしょう?」


「実は……。」


 俺はミルタさんに事の経緯を話すと、彼はすんなりと状況を呑み込んで、話に応じてくれた。


「なるほどなるほど、この世の珍しく……美味しい食材を求めて旅とは、素晴らしいですな。」


「それでミルタさんなら、珍しくて美味しい食材とか知ってるんじゃないかなって思った次第なんです。」


「そういう事ならばいろいろと心当たりはございますが、特に今年の寒期ともなればが現れると言われている時期ですな。」


「アレ……というと?」


です。」


「聞いたことのない名前の魔物ですね。」


「そりゃあそうです。寒期になると雪に覆われる山にポツンとある村……その名前をというのですが、その時期にそこに住んでいる人しか見ることのできない魔物なのですから。」


「ほぅほぅ。」


 ミルタさんから軽く話を聞いただけでも分かる希少性の高さ、旅の目標にはもってこいかもな。


「過去にゴーダバッファローを狩ったという記録は一度のみ文献に記録されていますが、盛大な宴の用意をしてからその肉を食べようとしたところ、たちまちに腐ってしまったとの記録がありました。」


「つまり、本当のゴーダバッファローって言う魔物の味を知っている人物はいないってことですね?」


「恐らくは……。そのツンドライサという村は閉鎖的な村なので、なかなかこちらにも情報が回ってこないのです。もしかすると村人の中には食べたことのある人もいるのかも……。」


「なるほど。」


 とりあえず第一候補はそれに決定だな。他にも何か珍しい食材の情報をミルタさんから聞いておこう。そうして俺はミルタさんに時間を作ってもらって、いろいろな珍しいものの話を聞かせてもらうことができたのだった。


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