家族との時間を終えて


 皆との休日を満喫した後の翌日、エミルの営業の様子を見に行ってみると、そこではバフォメットがなにやらエプロン姿で販売を手伝っていた。


「あらら、ずいぶんまた可愛い衣装だな。」


「エルフの皆さんがバフォメットさんに準備してくれたんですよ?あのままだとやっぱりちょっと怖いって、お客さんが言ってたらしくて。」


 俺の隣でどら焼きやマンドラアイスクリームを頬張りながら、ミースが説明してくれた。


「でもいいのか?あんなふうに1日中借りちゃってても。」


「大丈夫ですっ、あむ……難しい依頼はベールさんが率先して引き受けてくれてますから。」


「そ、そうか。」


 今のところのこのエミルのギルドの人員は、とても他のギルドとは比べ物にならないぐらい強い奴が2人集まってる。


 まぁ、その片方は今あぁやって売り子をしているんだが……。ウォータードラゴンも龍集会に呼ばれるぐらいの実力の持ち主であることは間違いないし、なかなか過剰な戦力がここに集まってるな。


「むふふ、バフォメットさん達が頑張ってくれているおかげで、私はこうやってお菓子に舌鼓を……。」


 そう幸せそうな表情をミースが浮かべていると、彼女の背後から受付嬢が一人走ってきた。


「ミースさん!!書類がまだ残ってますよ〜!!」


「えぇっ!?残ってましたか!?す、すぐ終わらせます〜!!」


 そしてパタパタと忙しなく、ミースはギルドの方へと戻っていった。


「ちょっと抜けてるミースらしいな。じゃ、次は獣人族の王都へ行ってみよう。」


 昨日行ったのは夜だったから、みんなの営業風景は見られなかった。今日はどんな感じになってるだろう。


 期待しながら獣人族の王都に飛び、大通りを歩いていると買った物件の前にたくさんの人の行列ができていることに気が付いた。


「……まさか。」


 チラリと中を覗いてみると、そこでは既にリコが先頭に立って、店舗販売を開始していたのだ。


「あらら、やっぱり。」


 ミクモも豆腐の販売をこっちに移転してるし……完全にお店自体が回っている。


「こっちの店長はリコだな。」


 後で正式に獣人族の国の支店の店長を、リコに任せることにしよう。彼女なら大丈夫。だって俺がいない間に店舗営業を始められたのだから。


「相も変わらず孤児院の方にも行列は出来てるし…………あれ?いよいよ俺……いらない?」


 このままでは俺が肩書きだけの社長になってしまう。何か、自分でできることを探さないと……。

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