レイとの入浴


 いざレイと入浴してみて、俺の懸念は全く必要のないものだったということが証明された。


「むふふふ、どうじゃ主?オスとメス……互いに一匹ずつが一糸まとわぬ姿で、水浴び……興奮せぬか?」


「……すまん、全くそういう感情が湧いてこない。」


「なんじゃと!?」


「いや……うん、多分だけど今俺はシアとかメリッサと一緒にお風呂に入ってるだけ……みたいな感覚なんだよな。」


 そう思ってしまうのも無理はない。だってレイが完全にシアやメリッサと同じ年齢に見えてしまうのだから。


「ふむぅ……ワシももう少し人化の練習をしておけばよかったのぉ。」


「あれってやっぱり結構練習が必要なのか?」


「まぁ、自分の思った通りの姿になるには多少の修練は必要だな。だが、ワシの場合魔力が膨大すぎる故に扱いが難しい。例えばこのように普通に人化を使うと…………。」


 パンっと彼女が手を叩くと、今にもお風呂場の天井に頭がついてしまいそうなほど、彼女は大きくなってしまった。


「このようになかなか適正な身長への調整が難しいのじゃ。」


「じゃあいつもの姿は?」


「無駄な魔力消費の最も少ない姿と言える。これっぽっちしか魔力を込めなくてよいのだからな。」


 大柄のまま、レイは指先で小ささを現した。それを眺めていると、彼女は何かを思いついたらしく、悪魔的な笑みを浮かべた。


「なるほど……そうか、そう考えると……この姿も使い道はある。」


「あの、何かめちゃめちゃ嫌な笑みを浮かべてるんですけど……。」


「この姿ならば、こんな事が出来てしまうな。」


 そして俺に向かって巨大な手を伸ばしてきたレイは、俺のことを軽くつまむと自分の胸の谷間にポンッと下ろしてきた。


「普段ではこんな事はできぬが、この姿ならば主の事を全身で包み込むことができよう。」


 クツクツと愉快そうに笑っていたレイだが、ふと体をぷるぷると震わせ始めた。


「……寒いのじゃ。」


 そうポツリと言って、レイはいつもの小柄な姿へと戻る。


「これならば極楽じゃ〜♪」


「どういう理屈なんだ……。」


「ワシら龍は、自分で体温の調節ができん。故に先ほどのように素っ裸になった上に、表面積が大きくなると体が冷えてしまったというわけじゃな。」


「なるほどな。ヘビみたいなものか。」


「あんな下等生物と一緒にするでないっ!!」


 ぎゃーぎゃーと喚くレイを宥めながら、温かいお風呂に入って1日を終えるのだった。

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