最高の芋酒
シンがボトルキープしていた芋酒は、今まで飲んだ芋酒の中で間違いなく一番美味しかった。芋酒の濃く甘い芋本来の香り、そして辛口ながらも、奥から顔をのぞかせる芋の甘み……間違いなく最高峰の一品だった。
「っかぁ~、美味い。今まで飲んだ芋酒の中で間違いなく一番美味しかった。」
「であろう?これと同じものが味わえるのはまだ何年も先だぞ。」
俺とシンが芋酒を味わっている傍らで、ドーナとミースもその美味しさに、ほぅ……と一つ大きくため息を吐いていた。
「これは美味い酒だねぇ~。」
「ですよねっ?すっごく美味しいお酒ですっ!!シンさんありがとうございます!!」
「うむ、構わぬのだ。どんどん飲んでくれ。」
俺とシンの二人はかなり酒には強いほうだから、この芋酒を何杯か飲んでも全然酔っぱらう気配はないが、ドーナとミースは3杯目あたりから少しずつ表情や言動に酔いが回っている様子が見られ始めた。
「ヒイラギぃ……。」
既に酔いが回り始めているドーナは、俺の腕にぎゅっとしがみついてきている。一方のミースだが、ミースはシンのもふもふの鬣に顔をすりすりと擦り付けていた。シンもそれはまんざらではないらしく、好きなようにさせている。
「まだ飲めるかドーナ?」
「飲めるけど……これ以上飲んだら今日のこと忘れちゃいそうだよ。」
いつもの勝気なドーナとは打って変わって、彼女は瞳に涙を浮かべながら今の状況を惜しむように言った。
「大丈夫、こういう機会はいつでもあるさ。また今度一緒に行こう。」
ぽんぽんとドーナの頭を優しくなでてやると、彼女は俺に体を預けてすやすやと寝息を立て始めてしまった。
「さてと、じゃあ俺達はお先にこの辺で失礼させてもらうよ。今日はご馳走してくれてありがとなシン。」
「うむ、構わんのだ。」
「今度は俺に奢らせてくれ。」
そう約束してから、俺はドーナをお姫様抱っこして店を後にした。そして街の中を歩いていると、ふとドーナが目を覚ます。
「えあ……あれ?」
「目が覚めたか?」
「ふぁっ!?あ、アタイ寝てて……こ、この格好はも、もしかしてっ!?」
「一番運びやすかったのがお姫様抱っこだったんだけど、嫌だったか?」
「い、いや……むしろ好きかも。」
「そっか、じゃあ夜風に少し当たって酔いを覚ましながら帰ろう。」
「うん。」
そしてゆっくりと夜の景色になった獣人族の国の王都を歩きながら、ドーナを抱えてエルフの国へと帰るのだった。
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