ダブルデート
急遽始まったダブルデートで、シンの案内のもとやってきたのは、大通りから少し外れたところにある一軒のバーのような雰囲気のお店だった。
シンの行きつけという割には店内には俺たち以外に人はいなくて、雰囲気はかなり落ち着いていた。その店のカウンターに腰掛けた。
「店主よ、我がとっておいたアレを出してはくれまいか?」
「かしこまりました。」
すると、どうやらシンがボトルキープしていた古そうな瓶がカウンターの前に置かれた。
「これは先代の国王が我にと贈ってくれた一品でな。こんなものを一人で飲むのは気が引けていた故、ここの店主に保存してもらっていたのだ。」
「お、お話を聞いただけでも、すごく高そうなのが伝わってきます。」
「良ければヒイラギ達も一緒に飲んではくれまいか?」
「逆にいいのか?そんな高そうなもの飲ませて貰っちゃって。」
「我とヒイラギの仲ならば、まったくもって構わぬ。本来これも飲まれるために作られたものだからな。飲んでやった方が酒のためにもなるというわけだ。」
「じゃあありがたく頂くよ。」
「うむ。では店主、それを開けてくれ。」
コルクのようなもので栓をされたその瓶をきゅぽんと開けて、大きな氷の入った4つのグラスに注いでいく。
すると、密封されていた芋酒の香りがふわりとこちらまで香ってきた。
「甘い芋のいい匂いだねぇ……。」
「その年の最高品質の芋のみを使って作られた芋酒である。まさに国王への献上品になる物だったというわけだな。」
「そ、そんなものを頂いちゃっていいんですか!?」
「構わぬ。いつまでも保存しておけるものではないからな。いつかは飲まねば腐ってしまうものだ。それならば美味いうちに飲んでおいた方が良いだろう。」
シンの言うとおりだ。酒にも賞味期限というものは存在する。いくら保存状態が良いとはいえ、長期保存していると味の劣化は少なからずある。ならば、一番美味しい時に飲んだほうが得だし、酒を造った人にも酬いることができるってわけだな。
そしてロックの芋酒が俺たちの前に運ばれてくる。
「うむ、では乾杯であるな。」
「ほい乾杯っ。」
みんなでグラスを合わせた後、俺は隣にいるドーナともう一度グラスを合わせた。
「乾杯だドーナ。」
「あ、あぁ乾杯。」
乾杯を終えた後、その芋酒を俺は一気にクイッと飲み干した。
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