スライム耳かき
翌日、みんなのやりたいこと……やって欲しいことリストにしっかりと目を通した俺は、まずシアのやって欲しいことから挑戦することにした。
「シア〜、こっちおいで。」
「お兄さん何〜?」
無邪気にこちらに、駆け寄ってきたシアに耳かき棒を見せながら太ももをポンポンと叩く。すると、何をしてくれるのか察したらしいシアはすぐに膝枕の上に頭を乗せてきてくれた。
「えへ、えへへぇ……お耳かきだぁ〜。」
「しばらくの間やってあげられなかったからな。」
シアの頭を撫でながら、ピコピコと興奮のあまり前後に動くシアの耳を軽くつまんだ。
「痛かったらすぐに言うんだぞ?それと急に動いたりしないこと。約束できるな?」
「うん!!」
「よし、良い子だ。じゃあ始めるぞ。」
ゆっくりとシアの猫耳の中に耳かき棒を入れて、カリカリと優しく浅い所から掃除していく。
「ふみゃぁぁぁ……気持ちぃ〜。」
とろんと膝枕の上で蕩けているシア。彼女の耳は普通の人間の耳とは違って、構造が分かりにくい。鼓膜までの距離も手探りでつかまなきゃいけないから、なかなか奥の方を耳かきするのは怖いんだよな。
「う〜ん、やっぱり奥の方はちょっと怖いな。」
でも浅い所をちょっとカリカリとしただけで、水っぽい耳垢が結構取れたし……奥の方にも溜まってそうなんだよな。
何かいい方法は……と思考を巡らせていると、俺はふとあるスキルの存在を思い出した。
「あ、そういえば、まだ1回も使ったことがないあのスキルは……ど、どうだろう。」
そのスキルはミミックアシッドスライムを倒し、宝玉を食べた時に手に入ったスキルの内の1つ……
耳の中を綺麗にする手段の中に、耳に水を入れて耳垢を浮かび上がらせるという方法があると聞いたことがある。
ウォーターブレスだといくら調整しても水圧が強すぎるし、もしかするとこのスキルなら……。
「ものは試し……
スキルを使ってみると、すぐに俺の手に変化が現れた。驚くことに両手が完全に透き通って、プルプルと液体のようになってしまったのだ。
「これが液状化……一応指の先まで感覚はちゃんとある。」
しかも、骨があると絶対にできないような、軟体動物のような動きも思い通りに再現できる。
「これなら鼓膜を傷つけずに奥まで掃除できるかも。」
チラリと膝枕の上のシアに視線を下ろしてみると、次の耳かきのカリカリを求めてウズウズとしている様子……。
「シア、ちょっとびっくりするかもだけど……動いちゃ駄目だぞ?」
そう囁いてから液状化させた指を伸ばして、シアの耳の中へと入っていく。すると、すぐにシアが素っ頓狂な声を上げて驚いてしまう。
「ふにょぉぉっ!?お、お兄さん何してるの?お耳の中ぐちゅぐちゅするぅ……。」
「気持ち悪いか?」
「わ、わかんにゃいっ……尻尾っ、お尻のとこゾクゾクするのっ。」
「ん〜、じゃあもうちょっとやってみようか。もう少しで汚れが全部取れそうだから。」
ぐっちゅぐっちゅとシアの耳の中で液状化した指を動かして、奥の奥の汚れをしっかりと取り除いた後、ズルリと音を立てて指を引き抜いた。
「にゃぁぁぁ……。」
引き抜いた指の中には、耳かきじゃ取り切れなかった汚れがたくさん浮いていた。
「これどうすればいいんだ?」
悩んでいると、頭の中に声が響いてきた。
『不純物の取り込みを確認。液体を強酸性に変化……消化します。』
そう声が響くと同時に、指の中に浮いていた汚れがジュワッと溶けてしまう。
「おっ、これは便利……でも酸性のままじゃ使えないから、中性に戻してくれ。」
『液体を中性に調整しました。』
「よし、完璧だ。」
まだ余韻でピクピクと体を震わせているシアの体勢を、ゴロンと反対に向けると、とろとろに蕩けきった顔がこちらを向いた。
「お兄しゃぁん……さっきのお耳かきすごく気持ちよかったぁ。」
「そっかそっか、じゃあ反対の耳もこれでやって良いかな?」
するとシアはコクコクと頷く。どうやら気に入ってくれたらしいな。
反対側の耳も液状化した指で耳かきしながら、ふとあることを思う。
後で他の人にも……試してみたいな。どんな反応をするのか見てみたい。そう思ってチラリと、ほんの少し開いている扉の方に視線を向けると、廊下の方でガタッと音がした。
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