鶏ガラ出汁の野菜ぶっこみスープ


 差し出された鶏ガラの出汁が染み出た野菜スープを一口飲むと、バイルはカッ……と大きく目を見開いた。


「う…う、美味ぇぇぇッ!!」


「ね?塩だけで充分なんですよ。」


「な、なんでこんなに複雑な味になるんだ!?塩しか調味料は入れてねぇんだろ?」


「それが出汁の旨味ってやつですよ。鶏ガラだけじゃなく、煮込んだ野菜の出汁も全部スープに溶け出してるんですから。」


 さて、料理は出来た。後はみんなに配るだけだ。


 またしてもつまみ食いしそうになっているバイルの手を、木ベラの柄でペシッと軽く叩く。


「つまみ食いはほどほどに。お腹をすかせてる兵士の人たちの分がなくなっちゃいますからね。」


「ちぇっ、そうだな。そいじゃあオレは仕事終わった兵士達に声をかけてくるぜ。」


「お願いします。俺は用事があるので、この辺で……。」


「なんだ、最後までいねぇのか?」


「今回頑張ったのはバイルさんですから。俺は食材の活用方法を教えただけです。それじゃ、後はお願いします。」


「つれねぇなぁ……今度酒ぐらいどっかで奢らせてくれよ。」


「時間があれば是非。」


 そして俺は後のことをバイルに託して、獣人族の国へと赴くのだった。




 獣人族の国へと赴いた俺は、脇目も振らずシンのいる王宮へと足を運ぶ。王宮の敷地の中に足を踏み入れると、まるで俺が来ることを察していたかのように、レイラが王宮の入り口の前で待っていた。


「ご機嫌麗しゅうございますヒイラギ様。」


「やぁレイラ、ちょっとシンと話したいことがあるんだけど。」


「シン様は現在大臣様方と、人間の国で起きた大事件に対する救援の方法についてお話しております。」


「ありゃ、俺がわざわざ相談しに来るまでもなかったか。」


「ヒイラギ様の属していらっしゃる国……ということもあり、シン様はかなり意欲的であられるようです。」


「そうだったんだ……ありがたいな。」


 それなら今シンに声をかけるべき時じゃないな。邪魔にならないように、今回はそっと立ち去ろう。


「シンの邪魔をしちゃ悪いから、今日はこのまま帰るよ。できれば俺が来たことも伝えないでくれると助かる。」


「かしこまりました。そのように致します。」


「うん、それじゃまた来るよ。」


 国と国が手を取り合えば、復旧は早くなるはずだ。一刻も早くあの王都の惨状がもとに戻ってくれれば良いな。


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