突き刺さる羨望の視線


 熱さで悶絶する他の面々を眺めて、これは冷まさないと食べれないと踏んだカリンは、入念に冷ましてから、一口でたこ焼きを頬張った。


「あふっ、あふっ……んんっ、だがこれはまた美味いものだな。サクッとした食感の次に熱々でとろりとしたものが溢れてきて、噛んでいるとプリッとまた違った食感が現れて……うむ、癖になる。」


「お、お母さん。僕も食べたい。」


「うむ、もちろんだ。だがマドゥには熱すぎる故もう少しふ~ふ~してやろう。」


 そしてカリンは念入りにふ~ふ~と、たこ焼きを冷ましてから食べさせていた。そんな光景を眺めていると、俺がシア達に食べさせようとしていたたこ焼きに、我慢できなくなったメリッサがパクっと食いついた。


「あっ、大丈夫かメリッサ?」


「あふぅ…はふ、だいじょうぶ。おいしい。」


 幸せそうな表情でたこ焼きを頬張っているメリッサを見て、シアが羨ましがっている。


「メリッサちゃんズルい~、お兄さんっシアにもちょうだい!!」


「まだちょっと熱いかもしれないけど……。」


「絶対大丈夫っ、ちょうだいっ!!」


 餌をねだる雛鳥のように口を開けているシアに、たこ焼きを近づけると、パクっと食いついた。


「ふみゅっふ……んん、はふはふ。」


 やはり少し熱かったらしく、シアはハフハフと口の中で必死に冷ましながらたこ焼きを味わっている。すると、次第に顔がトロン……と幸せそうに蕩けていく。


「えへへへぇ、お~いしぃ~♪お兄さん、もう1個頂戴っ!!」


「ぱぱ…わたしも…もっとほしい。」


「はいはい、ちゃんとあげるから。順番な?」


 そうやってシア達にたこ焼きを食べさせていると、ふと窓の外から視線が突き刺さっていたことに気が付いた。


「ん?妙に視線がって……あ。」


 外に目をやると、俺達が何をしているのか気になったらしいエルフの観客がぎっしりと詰めかけていた。その中には仕事を終えて帰ってきた社員の姿も何人か見受けられる。それを見ていたカリンがくすくすと笑う。


「くく、この国のエルフ全員、社長が気になって仕方がないようだな。」


「ここに最初に来たときはあんな羨望の目線じゃなく、どっちかって言うと軽蔑されたような視線を向けられてたんですけどね。」


「あぁ、それがずいぶんと変わったものだ。」


 少しうれしそうにしながらカリンは、外に詰めかけているエルフたちに見せつけるようにたこ焼きを頬張る。


「んふふ、社長……どうやら此方がその気ではないにしろ、他の我が子らが社長の作ったこれを食べたくて仕方がないようだ。」


「まぁもともとみんなに振る舞うつもりで、たくさん準備はしておきましたから。」


 さ、今日のお祭りを美味しいたこ焼きで盛り上げてみようか。


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