秘湯で起こったハプニング
マドゥと2人で温泉を楽しんでいると、竹の仕切り越しにランの声がこちらに届いてきた。
「ヒイラギ〜、そっちはどう?」
「いい湯だぞ〜。」
そう応答すると、バシャッと誰かが立ち上がった音が聞こえてきた。
「シア、お兄さんの方に行くっ!!」
「わたしもっ!」
すると、水音がどんどんこちらへと近づいて来て、すっぽんぽんのシアとメリッサの2人が、竹の仕切りをぴょんと軽々超えてきた。
「わぁっ!?し、シアちゃん達……こっちはだ、ダメだよ!!」
すっぽんぽんのシア達を見ないように、マドゥは必死になって目を覆い隠している。
「えへへぇ〜、マドゥ君も一緒だ〜。」
「みんないっしょ!」
「はわわわわ……。」
マドゥが恥ずかしさで目を覆っていることなんて気にせず、シアとメリッサの2人は俺の太ももの上に座ってくる。
「やっぱりここがいちば~ん♪」
「ぱぱ…どくせん。」
2人が俺の足の上でほっこりとしていると、こちらにまたバシャバシャと水音を立てながら誰かがやってきた。
「シア~?メリッサも、そっちはオスしか入れないお湯なんだから、戻ってきなさ~い。」
「あ、ランお姉さんだ……。」
「おこられる?」
「ラン、大丈夫だよ。子供なんだからどっちに入ったって構いやしないさ。」
「でも~……。」
ランが少し不服そうな声で竹の仕切りをゆさゆさと揺らす。すると、沈めていた重りがバランスを崩し、竹の仕切りがゆっくりと倒れ始めた。
「「「あっ。」」」
そして、向こう側の景色が見えてしまいそうになる直前……俺に向かって全力でライラが目隠しを手に突っ込んできた。
「ちょ、ライ……ぬがっ!?」
「ふぅぅぅ……貴様、万一にも見てないだろうな?」
勢い良く俺の目に目隠しを巻きながら、ライラが問いかけてくる。
「こっちに飛び込んでくるライラの姿しか見えなかったよ。」
「……それは私の裸は見えてしまったという事か?」
「…………。」
「どうなんだ?ん?」
「……ちょっとだけ。」
「貴様、この助平っ!!」
べしべしと、俺の頭をもふもふの毛が生えた鞭のようなもので叩いてくるライラ。多分尻尾で叩いてきているのだろう。
「……まぁ私の裸一つで済んだのならマシな方か。今回は貴様が自発的に起こした事故ではないから、この辺で許してやる。」
そう言って彼女は一つ大きくため息を吐き出すと、倒れてしまった仕切りを立て直して、俺の目隠しを採ってくれた。
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