ビーチでリフレッシュ


 2階層は、大して強くもない大量の虫の魔物が襲ってくるだけで、難なく切り抜けられたのだが……大量の虫に囲まれたミースは少々気疲れしてしまったらしい。


「や、やっぱり虫に囲まれると背筋がゾクゾクってなりますね……。」


「意外と虫嫌いだったか?」


「あんまり得意ではないですね。さっきのジャイアントスコーピオンみたいに、化け物みたいな見た目ならまだ大丈夫なんですけど……。」


「それなら次の階層でリフレッシュできるかもな。」


 俺は3階層へと続く階段が隠されている木をグッと押した。すると、いつものように、バカン……と音を立てて階段がそこに現れた。


「えぇ!?つ、次の階層への階段そんな場所にあったんですか!?」


「そ、これは初見見つけるのは大変だったぞ。」


 初めてこのダンジョンに潜った時は、シアがこの階段を見つけてくれたから、先に進むことができた。あの時シアが見つけてくれなかったら……下手したら永遠にここを彷徨う事になっていたかもしれない。


「さ、次に行ってみよう。」


 そして3階層へと繋がる階段を下っていくと……さっきまでの鬱蒼とした感じとは打って変わり、目の前に広い砂浜と広大な海が現れた。


「はわぁ〜……ダンジョンの中にこんな綺麗な所が。」


「さっきまで森だったが、一つ階段を下れば海……やはり不思議な場所だなここは。」


「ここはあんまり強い魔物が出てくる場所じゃないからな。ちょっとした息抜きには良いだろ?」


「じゃ、じゃああの海って入れるんですか?」


「俺は入ったことないけど、入れるんじゃないかな。でもそっち側には俺たちも足を踏み入れたことがないから、ちょっと足をつけるぐらいに……。」


「わっかりましたっ!!」


「むぉっ!?み、ミース待つのだー!!」


 流石は元金級の冒険者……素早い足取りで一瞬で海辺の方へと走っていってしまった。そんなミースの後を、シンがドスドスと足音を立てながら追いかけていく。


「あぁいう光景は恋人っぽいんだけどな。」


 二人が楽しんでいる間……俺も少しここで時間を潰すか。


 そう思い立ち、マジックバッグから釣り竿を取り出した。


「何が釣れるか分かんないが、とりあえず魚の切り身でもつけて……ほいっと!!」


 海岸から沖の方へと向かって釣り竿を振るい、餌のついた針を遠くへ飛ばした。


「後は、待つだけだな。あわよくばキングクラブとか釣れないかな……。」


 そんな願望を語りながら、俺は時間を潰すのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る