ダンジョンデート?


 二人の時間を作ってあげようと思い立っての発言だったが、これに対してミースが手を挙げてとんでもないことを言い出したのだ。


「あ、ダンジョンに行くのでしたら、私も連れて行ってください!!」


「いっ!?な、なんでまた……。」


「前に約束したじゃないですか、今度は私も連れて行ってくださいって。」


 ミースのその言葉で、俺は以前バフォメットと酒盛りをしたあとの状況を鮮明に思い出した。


「……あ、あの時か。」


「思い出しましたね?」


「思い出したけど……き、今日はシンもいるしさ。」


「シンさんも一緒にダンジョンに行きたいですよね?」


 ミースがシンにそう問いかけると、シンはまるでヘドバンするオウムのように、激しく首を縦に振ったのだ。


「うむ、うむ!!」


「ほら、シンさんも行きたいって言ってますよ?」


「…………。」


 弱ったなぁ、完全に誘導が失敗した。ここから無理に断ることはできないし、こうなったら……。


「わかった。その代わり、ミースはシンから離れないこと。ダンジョンじゃ何があるか分からないからな。」


「はいっ、わかりました!!」


「で、シンはミースを守ってあげてくれ。」


「うむ!!この命に変えても守ってみせるのだ!!」


「お願いしますね、シンさん。」


「任せるのだ!!」


 ミースにきゅっと手を握られると、シンは赤面しながらも、もう片方の拳をぐっと握り込み、力強く言った。


「じゃあ……ダンジョンに行ってみるか。」


「お願いします!!」


 そして三人でダンジョンの扉をくぐり、1階層に足を踏み入れた。


「ここも以前と変わりなし……相変わらずの迷路だな。」


「ここが報告にあった1階層の迷路空間……。」


「迷路の正解の道は俺が知ってるから、離れないようについてきてくれ。」


 二人の先頭に立って迷路の正解の道を進んでいくと、いつもは現れない魔物が俺たちの前に姿を現した。


「こいつは……サソリか?」


 目の前に現れたのは2mはあろうかという、巨大なサソリのような魔物だった。奴はこちらに気づくなり、とんでもない長さの毒針のついた尻尾で突き刺そうとしてきたのだ。


「いよっと。」


 その尻尾を下から突き上げて、攻撃の軌道を逸らすと、俺は一気に奴の目の前に迫る。


「虫にはこれが効くだろ……フレイムブレス。」


 そして高火力のフレイムブレスで、サソリの魔物を消し炭にした。


「よし、二人とも怪我はないな?」


「怪我をする道理がないのだ。」


「大丈夫です!!」


「なら良し、もう少しで次の階層への階段がある、開けた部屋が見えてくるはずだ。」


 普段なら何もいないその部屋の前にたどり着くと、そこもまた普段とはまるっきり違う光景が広がっていた。

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