シンとギルドへ
エミルに着いた俺たちは、真っ直ぐにギルドへと向かって歩き出した。その道中でミースにあることを問いかけられた。
「そういえば、ヒイラギさん達はあの大きいお屋敷にまだお引っ越ししないんですか?」
「まだちょっと時間がかかりそうだな。ドーナ達が色々とこだわりたいみたいでさ。」
「せっかくの新居ですもんね、ドーナさん達がこだわりたい気持ちもよく分かりますよ。」
そんな事を話していると、あっという間にギルドの目の前に着いてしまった。
「あ、良かったぁ……今日はお酒臭くないですね。」
ギルドに目の前に立って、クンクンと鼻を鳴らしたミースはホッと胸を撫でおろす。
「ここがミースの働いている、ギルドという場所か。なかなか良い雰囲気だな。」
「そ、そんな褒められるほどいい場所でもないんですけど……ま、まぁとりあえず中に入ってみますか?」
「うむ!!」
ミースに案内されて、シンがギルドの中へと入っていく。それに続いて俺も中へと入ろうとすると……後ろから声をかけられた。
「む?主ではないか?」
「その声は……レイ?」
後ろを振り返ってみると、大荷物を抱えたレイが立っていた。
「おぉ!!やはり主じゃ!!」
「その大荷物……もしかして、自分の部屋に置く荷物か?」
「うむ、今日は寝床を買ったのじゃ。主とともに寝られる大きいやつをな。」
「そ、そうか。」
どうやらレイは、今しがた大きなベッドを買ってきたらしい。
「ドーナとかランは?まだエルフの国にいるか?」
「今日は皆こちらに来ておるぞ?ドーナとランは愛の巣の掃除中じゃ。」
「そうか。」
あそこは広いから、掃除も大変だろうな……。後で俺も手が空いたら掃除を手伝おう。
「じゃ、俺は一回ギルドで用事を済ませてくるよ。気をつけてそれ運ぶんだぞ?」
「わかったのじゃ〜。」
そしてレイと別れて、俺もギルドの中へと入った。すると、ミースがシンにギルドの中の説明をしている最中だった。
「三人分の飲み物でも頼んで待っとくかな。」
二人の時間を邪魔しまいと、飲み物を頼もうと酒場の方に向かうと、そこでまたとある人物を発見した。
「んふぁっ、人間さんですねぇ〜。」
「ウォーター……こほん。ベール、今日もまたギルドに来てたのか?」
酒場のテーブルに大量の料理を並べて、それを頬張っていたのは、ウォータードラゴンだった。どうやら彼女もドーナたちと一緒にこの街に来ていたらしい。
「ちょうど朝ごはん食べたかったのでぇ〜、何か依頼を探すついでにここに来ちゃいましたぁ〜。」
「あ、そっか……すまないな。ちょっと今日は朝立て込んでて、朝ごはん作れなかったな。」
「大丈夫ですよぉ〜。昨日の夜たくさんご馳走してもらいましたからぁ。」
「そう言ってくれるとありがたいな。」
そして俺も彼女のテーブルの椅子に腰掛けると、ウォータードラゴンは料理を食べながら、ミースとシンの様子を興味深そうに眺めている。
「人間の街のギルドにも獣人が来るんですねぇ。」
「あれはちょっと訳ありなんだ。」
事情をウォータードラゴンに話すと、彼女は納得したようでほっこりと笑みを浮かべたのだった。
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