シン……動く


 グリフォンの剥製は俺がマジックバッグに入れて、ミースのギルドへと運ぶことになった。そこまでは良かったのだが……ここで一つ問題が発生してしまった。


「我もミースの働いているギルドとやらに行ってみたいぞ!!」


「えぇ!?シンさんが来るような場所じゃないですよ!?ただの酒場とギルドが合体しただけの場所ですし……。」


「良いではないか。我はそのギルドとやらを見てみたいと思ったのだ。」


 どうやらシンはまだミースと離れたくないらしく、ギルドについて行きたいと言い出したのだ。


「ヒイラギならば、我を人間の国へと送ることができるだろう?」


「まぁ、できるけど……そういうのって大丈夫なのか?」


「なにがだ?」


「いや、メーネルとかそういう人に許可とんなくていいの?って疑問に思ったんだが。」


「構わぬ!!良いのだ!!」


 あぁ……これは何を言っても聞かないやつだ。


「後で怒られても知らないからな?」


「うむ、承知の上だ。」


 すると、シンは俺の肩にポンと手を乗せてくる。


「わかった……じゃあミース。一回人間の国に戻るか。」


「ほ、本当に大丈夫なんですかシンさん……。」


「問題ないのだ。ミースは何も心配する必要はない。」


「ま、俺も一緒に同伴するから……大丈夫なはずだ。」


「わ、わかりました……そこまで言うなら。」


「うん、それじゃあミースはシンの手を握ってくれるかな。みんな俺にくっついてないと、移動できないから。」


「はいっ、シンさん失礼します。」


「う、うむ……。」


 シンはミースと手を繋ぐと、瞬く間に顔が真っ赤になり、ガチガチに固まってしまった。


 本当は別に俺に触れてなくても、対象を指定して一緒に移動できる転送の結晶を握っているのだが。こう言った方が、シンとミースの距離が縮まるかな……って思ったから、つい嘘をついてしまった。


「それじゃ、改めてジルにグリズ達もありがとうな。」


「いえいえ、ぜひともまたいらっしゃってください。」


「また珍しい魔物待ってるぜ!!」


 二人に感謝の言葉を伝えた後に、転送の結晶に魔力を込めて、俺たちは人間の国へと向かったのだった。


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