シンに春が……?


 二人がなんとか和解したところで、俺たちは一緒に王宮を目指すこととなった。その途中、シンがミースのことについて触れてきた。


「そういえばヒイラギよ、昨晩泊まっていったミースという女性……彼女とは付き合いは長いのか?」


「え?なんでまたそんなことを?」


「実は昨晩少し話をしてな。ヒイラギが〜……ドーナが〜……って散々泣きながら言っていたのだ。」


「なんかミースの愚痴聞いてもらったみたいだな。そういう会話にはならないだろうなって思ったんだが……すまなかった。」


「別に構わんのだ。我も楽しい時間を過ごせたのでな。それにしてもミースは酒に強かったぞ。我の飲む速さについてきていたからな。」


 さぞ楽しそうにシンは言った。すると、そんな彼の様子を横で見ていたミクモが、こっそり俺に耳打ちしてきた。


「これはもしや、シンにというやつが芽生えてしまったのではないか?お主はどう思う?」


「わ、わからない。でも……なんかすごく楽しそうにミースと過ごした事を語ってるよな。」


「てっきりシン坊は、恋などせんのかと思っていたのじゃが……驚きじゃな。」


「まぁ、確信するのはまだ早いな。できれば二人が話しているところを見たい。」


「うむ。そうじゃな。」


 そんな事を話していると、まさに俺達の要望が叶い、王宮からミースがこちらへと歩いてきたのだ。


「あ!!皆さんおはようございます。」


「う、うむ。おはようなのだミース。昨日はずいぶん酒を飲んだが……体は大事ないか?」


「えへへ、柔らかくておっきいベッドでたくさん寝ましたから、全然大丈夫です!!お部屋貸してくださってありがとうございました、シンさん。」


「そ、そうか。それは……うむ、良かったぞ。この国に寄ったらいつでも来るといい。部屋ならいくらでもあるからな。」


 はつらつとしているミースと話すシンは、なかなかミースの事を直視できないのか、少し恥ずかしそうに視線を反らしながら話している。


 そんな様子を目撃して、俺とミクモは確信した。


「お、お主っ、これは間違いないぞ!!」


「間違いないな。」


 コソコソと二人で話していると、それを不思議に思ったユリが首を傾げていた。


「二人とも……どうかしたのか?」


「いや、ミースとシンの仲が良さそうだなって思ってさ。」


 さてさて、シンはミースにほの字のようだが……ミースの方はシンの気持ちに気づくか、今後が楽しみだな。


 

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