ミクモと話し合いを
ミクモの事を引き連れて、いつもお菓子を販売している場所のすぐ隣に設けている、飲食スペースに無理矢理彼女を座らせた。
「ほら、一先ずお菓子でも食べながら、落ち着いて話そう。」
「うむ……そうじゃな。」
さっきよりも多少落ち着いたらしい彼女へ、質問を投げかける。
「で、どうしてそんなにお店を変えることに反対してきたんだ?今のミクモの知名度なら、俺たちが違うところに店を構えても全然大丈夫だろ?」
「そんなわけ無いのじゃ。妾の店へ訪れる人々は、皆お菓子を買うついでに豆腐を買っていく者ばかり。最初から妾の売り物目当てで来るお客は少ないのじゃ。」
しょぼん……としながらミクモは一口お茶を飲んだ。
「う〜ん、俺はそうは思わないけど……まぁ確かに、ある程度売り上げが落ちるかもしれないって点は否定できないかも。」
「じゃろ?故に今のまま続けてくれと頼んでおるのじゃ。」
「…………あ、じゃあミクモも店舗の中に一緒に入るか?それなら今まで通りだろ。」
そうなると、それなりに大きな店舗を探さないといけないけど、今の営業スタイルを続けたいならそうするしか無い。
「おぉ!!それは名案じゃ!!」
「ただ、問題はそれぐらい大きくて、店舗として使うに適してる建物があるかどうか……。」
「その心配は無用じゃ。妾に任せておけ!!」
パクっと残ったどら焼きを口の中に放り込んで、マンドラ茶を流し込んだミクモは、立ち上がるなり俺の服をグイグイと引っ張ってくる。
「ほれ、そうと決まればお主王宮に向かうのじゃ。ユリちゃんも来るかの?」
「う、うん!!」
そしてミクモに連れられるがまま、王宮の方へと向かっている最中、俺は彼女に質問を投げかけた。
「ミクモ、なんで王宮なんだ?不動産屋じゃないのか?」
「その辺の不動産屋に行ったところで、その辺を連れ回された挙句、大して価値のない物件を見せられるだけじゃ。ならば、この王都の不動産を取り仕切っている者に、直接掛け合うのが最も手っ取り早いじゃろう。」
「な、なるほど……。」
そうして歩いていると、前方にミクモがある人物を発見する。
「む?あやつはシン坊ではないか。なにやら紙袋をかかえているようじゃが。」
「あぁ、さっきシンは孤児院で売ってるお菓子を買いに来てたからな。その帰り道だったんだろ。」
「街中で噂の孤児院のお菓子じゃな。なるほど、気になるものを持っているではないか〜。」
ニヤリとミクモは悪い笑みを浮かべると、足音も気配も無く、シンの背後へと忍び寄っていった。
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