営業戦略
ユリ達の配慮のおかげで、最後尾に並んでいた人達にまでしっかりとフルーツプリンを売ることができ、今日も完売で営業を終えた。
「今日はたくさんの人の応対をしたから、子供達にもユリ達にも流石に疲れの色が見えるな。」
みんなが頑張ったおかげで、昨日の売り上げだけで、孤児院の運営費三日分位は稼ぐ事ができた。
「ストックが出来たなら、明日はお休みでいいな。」
毎日こういう風に営業するより、今人気が絶頂期の時に、あえて一日……もしくは二日ほど営業を休むという戦略を取ろうと思う。
子供達とユリ達に休息をとってもらうのが狙いだが、それともう一つ、味を覚えたお客さんを焦らすという狙いがある。
「理想のスケジュール的には……週二日休みの五日間営業かな。子供達の様子を見ながらそこは適宜調整しよう。」
そうして、営業スケジュールの管理をしてると、院長に今日の売り上げを手渡しに行っていたユリたちが戻ってきた。
「ヒイラギ社長、何をしてるんだ?」
「営業日とみんなの休みを管理してたんだ。」
「アタシは休みなんてなくても大丈夫だぞ。」
そう言い張ったユリの頬を指でつつく。
「ユリは良くても、子供たちは休ませなきゃダメだろ?それにユリたちだって休まなきゃ体壊すんだから。」
「むぅ……。」
「そういうわけで、明日の営業は休みだ。みんなしっかりと休息をとるように。」
「「「はーい!!」」」
「それじゃ、今日の仕事はお終いだ。みんなお疲れさま。」
「「「お疲れさまでした!!」」」
終礼を終えて、俺は昨日依頼していた品物を取りにエノールの工房へと足を進めた。すると後ろからユリが走ってくる。
「しゃ、社長!!どこに行くんだ?」
「これから、昨日依頼していた品物を受け取りに行くんだよ。」
「い、一緒に行っちゃダメか?」
「別に構わないけど、特に面白いものでもないぞ?」
「大丈夫だ!!」
「そ、そっか。それじゃあいっしょに行こうか。」
引く気配のないユリを連れて、俺はエノールの工房へと足を運ぶ。すると工房の中では、エノールが俺が依頼していた調理器具の調整をしていた。
「おっ、ちょうどいいとこに来たな勇者様……と、隣にいんのはエルフの嬢ちゃんか?」
「そ、俺の店の社員の一人なんだ。ほんで、頼んでた調理器具の方はどんな感じだ?」
「今最後の一個の調整が終わったところだぜ。」
そう言ってエノールは、頼んでいた調理器具のうちの一つであるリンゴカッターを机の上に置いて、アプルをそこにセットした。
「あとはこいつを上から押してやれば……。」
刃のついた蓋をぐっとエノールが押しこむと、シャコンと音を立てて、綺麗にアプルがカットされていた。
「こんな感じでいいんだろ?」
「あぁ、完璧だ。流石だなエノール。」
「仕組みさえ理解しちまえばこんなもんよ!!」
そう言って胸を張ったエノールは、何を思ったのか俺の耳元に顔を近づけてきた。
「なぁ、勇者様。実はこいつをここで販売しようと思うんだけどよ。いいか?」
「別にいいぞ。むしろ広まってほしいものだからな。」
「感謝するぜ。他にも作っておいたモンがあるからよ。それの使い心地も試していってくれ。」
エノールが作ってくれた他の調理器具もユリと一緒に一つ一つ使い心地を確認して、子供達でも安全に簡単に使えることを確かめるのだった。
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