大盛況の販売所


 やっとユリ達が子供達と一緒になって、フルーツプリンを販売している場所までたどり着いた。


「あっ!!社長っ!!」


「やぁみんな、ご苦労さま。」


「社長がここに来たということは……エルフの国に迫っていた危機は、もう大丈夫なのか?」


「あぁ、一先ずは大丈夫。安心していい。」


「そ、そうか……よかった。」


 ホッとユリは安堵のため息を漏らした。


「で、子供達と一緒に作ったフルーツプリンはどんな感じだ?」


「みんな味見もちゃんとして……社長に食べさせてもらった試食の物と、遜色ないものが作れたと思う。」


「ほぅ、じゃあ一つ俺も味見させてもらおうかな。」


 ユリ達が俺の味見用に取っておいてくれたフルーツプリンを、試しに手にとって眺めてみた。


 すると、プリンでよくある失敗例の一つである気泡ができてしまう……ということもなさそうだった。俺に食べさせるためのこれだけでなく、他の商品にしているプリンにも気泡は見られない。


「うん、見た目は完璧。盛り付けも、一つ一つにオリジナリティがあって……独創性があっていいな。」


 見た目に関しては、文句なし。後、問題なのは食感と味……。みんなに配ったレシピには、しっかりと分量通りなら、ちょうどいい火のとおりになる時間が書いてあるが……さてさて。


 果物と一緒にプリンを食べてみると、きめ細やかで、滑らかな食感を感じた。それに伴って、濃厚な甘さが口いっぱいに広がる……。しかしその濃厚な甘さはくどくなく、果物の甘酸っぱさで後味がスッキリとしていた。


「味も完璧だな。こちらも文句の付け所がない。商品としては十分だ。」


 俺がフルーツプリンに舌鼓を打っている間にも、どんどん……どんどんフルーツプリンは売れていく。


「ユリ、今回何個用意できた?」


「何個か失敗しちゃったやつがあって、それは省いてあるから……用意できたのは450個だな。」


「それが今どのぐらい売れてる?」


「実はもう半分以上売れてるんだ。」


「も、もうそんなに売れてるのか……。最後尾の人まで行き渡るかな。」


 できれば来た人には買っていって欲しいし……買いそびれるなんてことにはなって欲しくない。


「あ、それなら多分大丈夫だ。今ボタンが子供達と一緒に追加のフルーツプリンを作ってる。」


「そういう状況判断が咄嗟にできたのか……。」


 本当にユリ達の応用の良さには驚かされた。自分達で判断して、そういうことまで配慮できるなら……もう任せても大丈夫そうかな。


 それじゃあ明日からは、ユリ達に完全にこちらは任せてみよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る