騒動を終えて


 獣人族の国へとやってきた俺は、駆け足で普段お菓子を販売している場所へと走った。するとそこではいつも通り社員のエルフたちがお菓子の販売をしている。しかし、みんな表情が普段より少し暗い。


「みんな、向こうの方は何とかなったぞ。」


「ヒイラギ社長!!」


 今日こんなことがあったから、急遽獣人族の国の営業を手伝いに来てくれていたアンネが、表情を明るくしながらこちらに駆け寄ってきた。


「それじゃあもう帰っても大丈夫なんですか?」


「あぁ、問題ないけど。まだ避難してるエルフが大半だろうし、アンネたちは今日はこのままこっちの方の営業を手伝ってもらえるかな?」


「了解しました社長!!」


「うん、頼んだよ。俺はユリたちの方の様子も見に行ってくるから。」


 そう言うと、アンネがふとあることを思い出したように言った。


「あ、そういえば……ユリちゃんたちの方はなんかすごくお客さんでにぎわってるみたいですよ?さっき買いに来てくれたお客さんが言ってました。」


「おっ、それは嬉しい報告かも。」


「ユリちゃんたちの方でも何か売ってるんですか?」


「あぁ、今日はフルーツプリンを売ってるはずだな。みんなも良かったら営業終わりにでも買いに来てみてくれ。」


 そして俺はまたしても駆け足で、今度は孤児院を目指して走った。ふだんならこの孤児院へ向かう道にはあんまり人がいないのだが、今日はかなり大勢の人が行き来している。そして孤児院の方角から戻ってくる人は、みんなほっこりとした表情で紙袋を携えている。


「あの紙袋は……。」


 間違いない。お持ち帰り用に俺達で用意している紙袋だ。という事は、アンネの言っていた通り今日の孤児院の方での営業は大盛況みたいだな。


 通行人の様子を見て、一安心しながら孤児院へと向かっていると、道の途中からずらりと孤児院へ向かって行列ができているのを発見する。


「うぉぉ……こ、これはとんでもない行列だな。」


 その行列の長さに圧倒されていると、最後尾で行列の整理を担当していた孤児院の子供とモミジに話しかけられた。


「あっ!!勇者様だ~!!」


「社長はっけ~ん!!」


「おぉ、モミジ。今日は滅茶苦茶混んでるみたいだな。」


「もぉ~今日はすっごいんだよ。ずっとこんな感じなんだから。」


「ははは、でも売れ行きがいいのはいいことだ。他のみんなは販売の方に回ってるのか?」


「うん、みんな大忙しで働いてると思うよ~。」


「良し分かった。じゃあちょっとそっちの方見てくるよ。」


 長い行列を辿って、俺はまた孤児院の販売所目指して歩き出すのだった。


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