良い相談相手
師匠に言われた通り、少し落ち着きを取り戻すために、俺は一人ハウスキットの中でコーヒーを飲んでいた。
「……ふぅ。」
熱いコーヒーを飲んで、一つ大きく息を吐き出すと、神華樹からイリスが姿を現した。
「ヒイラギさん、お疲れ様でした。」
「あぁ、イリスか。」
「神気を使った戦い方……お見事でしたね。」
「俺自身、あんなにナルダに通用するとは思ってなかったよ。」
俺が一撃を与えた後から、奴はほぼ何も出来ずに沈んだ。魔法が使えないように、絶え間なく攻撃していたのは間違いないが、それでも奴ほどの練度の魔法使いなら、どこかのタイミングで魔法を使うこともできたはず。
「私があのナルダという人間を覗いたとき……魔力の源が、死の女神と繋がっているのが見えました。」
「ナルダを覗いたのか?」
「ついこの前、このエルフの国を襲いに来た時にですけどね。私の予想では、恐らくあのナルダという人物は、死の女神から魔力を借りていたのかもしれません。」
「それってどういうことだ?」
「死の女神から魔力を借りていたからこそ、膨大な魔力で強力な魔法を扱うことができた……と、私はそう考えているんです。だからこそ、ヒイラギさんの神気を体に流し込まれた時は、魔法がうまく扱えなかった。」
「なるほど。そう考えると確かに……そうだったのかも。」
「えぇ、自分自身の魔力で魔法を発動させるのであれば、ナルダという人物ほどの魔法使いなら、詠唱も予備動作もなしで魔法を使えたでしょうから。」
「そうか。」
となると、神気闘法はナルダに対して特攻だったというわけだ。それなら納得だな。
「死の女神側も、ヒイラギさんが神気を自由自在に扱えるなんて、思ってもいなかったんだ思います。」
「だからこそ油断した……か。」
「はい。でもこれであちらもヒイラギさんのことを、かなり警戒するでしょう。そう簡単に手を出してこれないはずです。」
「でも、自分達の幹部が囚われたってなれば、躍起になって取り戻しに来るんじゃ?」
「……どうでしょう。そこまで彼女の考えを読むことはできませんが、あまり危険なことに挑まないような気もします。」
「未来が見えるスキルがあればな。こういう時に便利なんだが……。」
思わず、俺はそんな事を呟いてしまった。すると、イリスがクスリと笑う。
「ふふ、そんな事が出来たら、女神以上の存在になっちゃいますよ。それに、そんな事が出来てしまったら、普段の生活が面白くなくなっちゃいます。」
「それはそうかもな。」
そして少しイリスと会話をした後、俺はユリやアンネ達の避難先だった獣人の国へと向かうのだった。
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