ナルダに繋がる太い鎖
俺がナルダに繋がっている鎖へ向けて、神気を纏った拳を叩きつけると、奴が苦しみながら絶叫した。
「ぐっあぁぁぁぁぁっ!!」
そんな様子を見て、師匠が自分の体をきゅっと抱きしめながら言った。
「おぉぅ……そうだったな。あの鎖を叩かれる苦しみはなかなか凄まじいのだった。」
「師匠の場合、ある程度死の女神との繋がりが薄くなった頃にやったので、ある程度軽減はされてたと思うんですけど、これは何も下準備してませんからね。」
「あぁ、だから相当苦しいだろうなと思って、思わず身震いしてしまったんだ。」
師匠の想像通り、相当の苦しみだったらしくナルダは今の一撃で気絶してしまった。鎖はまだヒビすらも入っていない。
「流石に硬い。傷一つ入らないな。」
「まぁ、流石は死の女神の最古参部下といったところだろう。一筋縄ではいくまい。」
「神華樹の果実を食べれば後何回か、叩けると思いますけど。」
「いや、それはやめておくとしよう。後々それが必要になるかもしれんからな。無駄使いは厳禁だ。」
そしてカリンは、ナルダを拘束している部屋の床に、カリカリと複雑な魔法陣を描き始めた。
「此方は色々とコイツに対して魔法を重ねがけしておく。社長とシズハはもう戻って良いぞ。」
「わかりました。」
「では失礼しよう。」
後の始末はカリンに任せて、俺は師匠と奴を拘束している部屋から出た。すると、師匠にあることを褒められる。
「いやはや、柊。お前の戦いを遠目で眺めていたが……やはり随分腕を上げているな。」
「夢中だっただけですよ。神気闘法は短期決戦を仕掛けないといけないですから。」
「それは理解しているが、よもやあのナルダを一方的にあぁもボコボコにしてしまったからな。内心とても驚いたよ。特に、あの魔法を使おうとしたナルダの喉に、肘を叩き込んだのはよかったな。」
「はは……ありがとうございます。」
褒めちぎってくる師匠にそう言葉を返すと、彼女はうむむ……と不思議そうに首を傾げた。
「なんだ、ナルダに勝ったのに随分と嬉しそうではないな。何か気にかかる点でもあるのか?」
「……はい。師匠は死の女神に命令されて、エンリコの首を回収しに来たじゃないですか。だから、アイツの鎖が切れるまでに、またエンリコが来るんじゃないかって。」
「なるほど、もう次を考えているというわけか。ま、確かにその可能性は無いともいえない。だが、すぐに来るわけではないだろう。」
「そ、そうかも知れないですけど。」
「次は来る、だが今じゃない。となれば気を休め、休息をとるのが定石だ。」
「……わかりました。」
師匠の教えを聞いて、一先ず俺は気を休めることにしたのだった。
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