融通の利くスキル
料理が全てなくなる頃……今日お酒を飲んでいた面々は皆一様に潰れてしまっていた。
「ぐぐ……ま、また負けた。屈辱だ。」
「エルフの叡智が……。」
今回こそは……と意気込んでいたカリンとフィースタもその心意気虚しく、テーブルに突っ伏している。
「この薬物耐性ってのは、なかなか良いスキルだったな。でもこうやって酒を飲んでも飲んだ気がしなくなるのは……少し残念か。」
この薬物耐性というスキルがあるおかげで、俺は酒を飲んでも本当に酔うことができなくなってしまったらしい。
少し残念に思っていると、俺の前にピロンと音を立てて、画面が表示された。
「ん?これは……。」
その画面には、『薬物耐性を常に有効にしますか?』と書かれている。その文字の下には、
「これ、常に有効に今はしてあるんだよな。」
どうすべきか……と悩んでいると文字が違うものに変わった。
『体に害を及ぼすものが入った場合には、自動的に有効化されます。』
「それなら、今はいいえにしておこうか。」
そう言うと、また文字が切り変わった。
『薬物耐性を常時有効から、緊急時有効に切り替えました。』
「これで、酒も普通に嗜めるようになるのかな。」
試しにハイボールを作って飲んでみると、さっきまで感じなかったアルコールを確かに感じた。
「おっ、良いね。これなら楽しめる。」
そして改めて楽しめるようになったお酒を飲んでいると、マドゥを寝かしつけたユリが、おずおずとしながらカリンを他の席に座らせて、俺の隣に座った。
「しゃ、社長……。」
「どうした?」
「前にアタシがお酒を飲んだ時、恥ずかしい行動をしてしまったのは記憶に新しいと思う。」
「まぁ、そうだな。」
「でも、こういう大人の付き合いという場所で、アタシも普通にお酒を嗜めるようになりたんだ。……ど、どうしたらいい?」
「…………む、難しい質問だな。酒に酔わない方法を聞きたいってことで良いんだよな?」
「うん。」
酒に酔わない方法は……まぁ色々あるが、こればっかりは体質がかなり影響してくるからな。
「わかった。じゃあ、一回寝ちゃったみんなをベッドに運ぼうか。その後、少し酒を飲みながら話そう。」
そう言うと、ユリはパァッと表情を明るくした。
「ありがとう社長!!じゃあアタシは母上とフィースタを運んでくる!!」
彼女に続いて俺も、ドーナ達を担いで屋敷に運ぶのだった。
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