ヒイラギ特攻酒


 宴会が始まるやいなや、予想通りロックリザードのコラーゲン鍋の争奪戦が幕を開けた。普段は人並みにしか食べないリリンやフレイも、躍起になってがっついている。


 その中でも激しかったのは龍種三人……ラン、レイ、ウォータードラゴンによる争奪戦だ。


「これは私のですよぉ〜!!」


「あんたもう鍋一つ空にしてるでしょ!?そっちは寄越しなさーい!!」


「そうじゃぞ!!独り占めは良くないのじゃ!!」


 今にもあの三人はコラーゲン鍋をめぐって、戦いを起こしそうになっている。


「三人とも、仲良く食べてくれよ?喧嘩はダメだ。」


「だって〜、ウォータードラゴンがすごい勢いでお鍋を食べちゃうのよ。」


「そうなると思って、後ろのテーブルで追加の鍋を沸かしてるから。」


 指差したテーブルには、まだ幾つかの鍋がカセットコンロによって温められていた。ウォータードラゴンが凄まじく食べるせいで、みんなが食べる分がなくなったら困ると思ってな。


 すると、それを見たランとレイが目を輝かせた。


「流石ヒイラギね!!そういうとこ気が利くわ!!」


「ではウォータードラゴンにはそれをやろう!!ワシらはあっちを食うのじゃ!!」


「持ってくる時は、くれぐれもこぼさないように気をつけるんだぞ〜。」


 そして俺も料理を食べようとすると、スッ……とカリンから例の酒の入った瓶を差し出された。


「社長、まずは一献だ。」


 彼女にグラスを差し出すと、ピンク色の液体がトクトクと音を立てて注がれた。


「こ、これ本当に飲めます?」


「無論だ。薬酒故、独特の風味があるが……それがまた旨味というものだ。ま、試しに飲んでみるといい。」


「……じゃあいただきます。」


 ニコニコと満面の笑みで、こちらを見守るカリンとフィースタ。二人の満面な笑みに少し疑問を抱きながらも、俺はその酒を口に含んだ。


「〜〜〜っ!?」


「くく、どうだ社長?効くだろう?」


 これを一口口に含んだ瞬間、トロン……と心地の良い酩酊感が襲ってきた。


「こ、これ……一体何を?」


「此方らが丹精込めて作った魔酒だ。酔いが回りやすくなる薬草をすりつぶしながら、じっくりと此方とフィースタの魔力を混ぜ込んだ。社長の耐性を抜けられるようにな。」


「つまりはあなた様特攻のお酒というわけです。」


「な、なるほど。」


「しかも飲めば飲むほど、酒への耐性は一次的に下がっていくのだ。」


 勝ちを確信したカリンはニヤッと笑う。


「さぁ、共に酔い潰れようではないか……な?社長。」


 

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