冗談か真意か……


 ハウスキットの中に入って、仕込みの続きをしていると、シアとメリッサも遊びから帰ってきた。


「「ただいま〜!!」」


「はい、二人ともお帰り。ちゃんと手を洗うんだぞ〜。泥だらけなら着替えもしっかりな。」


「「はーい!!」」


 ドーナとランに連れられて、シアとメリッサはシャワールームの方へと向かっていった。そんなやり取りを俺の間近で眺めていた師匠が、ポツリと言った。


「今のやり取りを見ていると、まるで柊が本当に父親になってしまったかのようだな。」


「まぁ、シアとメリッサ二人の育ての親って自覚がありますから。ちょっとぐらい父親らしくはなるんじゃ?」


「ふふ、ならば私は母親らしくならねばな。是非ともシアとメリッサにはママと呼んでもらいたいものだ。」


「呼んでって言ったら呼んでくれると思いますよ。」


「うむむ……それはそれで違うんだな。やはり自発的に呼んでくれなければ意味がない。」


「ま、長い目で見てれば大丈夫だと思いますよ。」


 そう言うと、ジッと師匠が俺の目の奥を覗き込みながらこんな事を言った。


「お前が私に子を産ませれば……すぐにでも呼んでくれる子ができるのだぞ?」


「…………そ、それ冗談ですよね?」


「さぁ?どうだろうな。」


 俺が少し動揺していることに、ニヤッと師匠が笑っていると、俺はとある光景を目にしてしまって途端に固まってしまう。


「ふふふ、何をそんなに固まっているんだ?」


「い、いや……その、師匠?う、後ろを振り返ったらわかるかと……。」


「ん?後ろ?」


 クルリと師匠が後ろを振り返ると、そこには般若を表情に宿したランとドーナが仁王立ちしていたのだ。


「ずいぶん面白い話をしてるじゃない。ねぇ?」


「そういう話は、アタイらがいる目の前でやってもらいたいもんだよ。」


「ら、ランにドーナ……こ、子供達とシャワーに行ったはずじゃ。」


「えぇ、でももう慣れてるものだから?ぱぱっと終わっただけよ。」


 そして二人はステータスに任せて師匠の事をガッチリと拘束すると、何処かへと引きずっていった。


「…………あれはこってり絞られるな。」


 夕飯までに帰ってくればいいけど。


 引きずられていった師匠に手を合わせ、俺は仕込みを再開するのだった。


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