犬猿の仲


 ハウスキットの方に戻ろうと足を進めていると、しっとりと汗をかいた師匠が向こうから歩いてきた。


「あれ、師匠?」


「ん?柊か、もう仕事は終わったのか?」


「一先ずはって感じです。師匠は何を?」


「私は自分の鍛錬ついでに、子供達と遊んできたんだ。」


 どうやら師匠はシア達と遊んでくれていたらしい。


「まったく驚いたぞ。シアもメリッサも、果てにはマドゥまで私より足が速いんだ。日本にあんな子供がいたら相当話題になってるぞ。」


「あははは、シアたちがちょっと特別ってのもあるかもしれませんね。」


 そんな事を話していると、こちらにリリン達も歩いてきた。どうやら今さっき起きたらしく、二人の頭にはピョコンとまとまったアホ毛のような寝癖ができていた。


「あ!!ヒイラギさんとシズハさんだ!!」


「こんなところで突っ立って何してるのよ?」


「たまたまここで行き合ったんだよ。今からハウスキットに向かうとこ。」


「それならボク達と一緒に行こうよ!!ちょうどハウスキットの方からいい匂いがしてたから、ボク達も行こうとしてたんだ。」


「なんだ、そうだったのか。それじゃドーナ達もあっちにいるし、みんなで行こう。」


 そしてハウスキットの方へと足を進めた瞬間、突然リリンがブルリと背筋を震わせていた。


「ん?リリン?」


「うっ……な、何かしらこの感じ。体がこの先に進むことを強く拒否してる気がするわ。」


「え〜?気のせいだよお姉様〜、別に嫌な気配は感じないよ?」


「そ、そうじゃないのよ。私の体に刻まれた本能がこの先に進むなって、訴えかけてくるの!!」


 嫌がるリリンの手を必死になってフレイが引いていると、目前に見えるハウスキットからウォータードラゴンがランと一緒に姿を現した。


 そしてウォータードラゴンと目が合ったリリンが、絶叫する。


「な、ななな、なんであなたがここに居るのよーーーッ!!」


「あららぁ〜、私に会えて嬉しいですかぁ〜?」


「嬉しいわけないでしょっ!!」


 ぎゃ〜ぎゃ〜とウォータードラゴンとリリンが騒いでいると、これまた眠そうな目をこすりながら、レイがグレイスを抱えてこちらにやって来た。


「なんじゃぁ〜騒々しいぞぉ〜。」


「あっ!!クリスタルドラゴン様ぁ〜、お久しぶりです〜。」


「む、久しいなウォータードラゴン。……それと今のワシはレイだ。種族名ではなく、こちらの名で呼ぶのじゃ。」


「えへへ~失礼しましたぁ〜。」


 そんな会話をしている内に、リリンがそそくさとウォータードラゴンの横を抜けようとするが、シュルリと伸びてきた彼女の尻尾にあっけなく捕まった。


「んに゛ゃあぁぁぁッ!!離しなさいよッ!!」


「う〜ん♪可愛い子猫ちゃん、私が連れてってあげますねぇ〜。」


 抵抗も虚しく、リリンはウォータードラゴンにぎゅっと抱きしめられながら、ハウスキットの中へと消えた。

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