ロックリザードの代わりに現れた者
ロクロ山を登り、目的のミスリルを背負ったロックリザードを探すこと一時間。すでに俺は山頂付近まで歩いてきてしまっていたのだが……一向に目的のロックリザードが現れる気配はない。
ここに来るまでに何体かロックリザードは目撃したのだが、いずれもミスリルを背負ったやつではなかった。
「う~ん、困ったな。なかなか現れてくれない。」
このまま見つけられず、手ぶらで帰るのだけは避けたいな……。でも必要じゃないロックリザードを狩るのもなんか違うしな。
「このまま進んで見つかるとも思えないし、引き返すか。」
そして踵を返して引き返そうとすると、突然地面に影が降りた。
「ん?」
「人間さ〜ん!!」
「この声はまさか……。」
そう思っていたのも束の間、俺の前に一匹のドラゴンが勢いよく着陸したのだ。
「ま~たこんなところで何してるんだ?
俺の前に降り立ったのはウォータードラゴンだった。降り立った時はドラゴンの姿だったのだが、俺の前に立つとすぐに人化して人間の姿へと変わった。
「いやぁ~、ちょうど大食い大会の会場に向かってたらぁ、人間さんの匂いがしたのでぇそれを辿ってきましたぁ。」
「俺の匂いがしたって?」
「えぇ、とっても美味しそうな匂いがしたんですよぉ~。」
うへへ……とにやけ顔を浮かべて、彼女は口元からよだれをあふれさせた。
「言っとくが、俺は食べても美味しくないぞ。」
「口ではみんなそう言いますけどぉ~、意外とわかりませんよぉ?も、もしかするとぉ人間さんはとっても美味しいかも……確かめたいので一口食べてもいですかぁ?」
「ダメに決まってるだろ。」
そうツッコミながら彼女の眉間に軽くチョップを喰らわせた。
「はぅあっ……じょ、冗談ですよぉ~。」
「ドラゴンで大食いのお前が言うと冗談に聞こえないんだよ。」
「えへへぇ~そんなに褒めないでくださいよぉ。」
「褒めてるつもりはないんだけどなぁ。」
「それでなんですけどぉ、人間さんこんな辺鄙なところで何してるんですかぁ?」
「ちょっとここで魔物を探しててな。ロックリザードって魔物なんだ。」
「あ、私その魔物知ってますよぉ。すっごく硬くて美味しくない魔物ですねぇ。」
少し嫌な顔をしながら彼女は言った。
「ま、何も調理しなかったらそうだろうな。ちなみにランとかはロックリザードは大好きだぞ?」
「えぇ!?あんなのを食べるんですかぁ?」
「あぁ、ちゃんと調理してやれば肉はホロホロで柔らかくて、筋はプルプルのコラーゲンになるんだ。」
そう説明していると、彼女の口からよだれが滝のようになって流れ落ちていた。
「気になるなら今日食べに来るか?」
「良いんですかぁ!?」
「ただし、食べるロックリザードは自分で捕まえること。いいな?」
「わっかりましたぁ~!!たくさん捕まえてきますよぉ~!!」
すっかりロックリザードを捕食対象として再認識した彼女は、ピュンと凄まじい速さで俺の前から姿を消してしまった。
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