製作依頼


 ユリ達と別れて、俺がやってきたのは以前ドーナの武器のことで世話になった、エノールの工房だ。


「お邪魔するぞ。」


「ん?おぉ、勇者様じゃねぇか。久しぶりだな。今日はどうした?また武器でも壊れたか?」


「いや、実は今日は作って欲しいものがあってな。」


 エノールの前に、俺はピーラーや果物カッターなどの便利な調理器具を並べていく。


「コレと同じようなものを作って欲しいんだ。」


「こいつは……何の器具なんだ?」


「調理器具だ。子供達でも簡単に果物や野菜を切ったりするように作られてる。」


「ほぉ。」


 エノールは一つ一つ調理器具を眺めていき、う〜むと唸る。


「構造自体は簡単なやつもありゃあ……なかなか複雑なやつもあるな。この二つはすぐに作れそうだが。」


 そしてエノールが指差したのはピーラーと果物カッターだった。


「おっ、本当か?」


「あぁ、一日ありゃあ何個かは作れるぜ。その代わり、材料がちょいと欲しいか。」


「取ってくれば良いんだな?」


「話が早くて助かるぜ勇者様。ロックリザードのミスリルのやつが一匹いれば足りるはずだ。」


「ロックリザードか、アイツは美味いからみんなも喜ぶかな。」


 コラーゲンもたっぷり含まれてるし、アレを鍋にすればこの前の埋め合わせもできるだろう。


「よし分かった。じゃあちょっと行ってくる。」


「頼むぜ、オレはその間にこの器具の解析を進めさせてもらう。」


「あぁ。」


 そして俺はエノールの工房を一度後にすると、ゆっくりと歩いてロックリザードの住処であるロクロ山へと向かった。


「ここに来るのも久しぶりに感じるな。」


 前回オリハルコンのロックリザードを見つけるのは難しかったけど、今回は希少性のあまり無いミスリルだから、すぐ見つかると良いな。


 そんな期待を抱きながら、俺はロクロ山へと足を踏み入れる。すると、山を登り始めてから数分で一体目のロックリザードが目の前に現れた。


「おっ、出たな。」


 目的のロックリザード以外を狩るつもりは特にないから、ミスリルのやつじゃなかったら無視しよう。


「鑑定。」


 目の前に現れたロックリザードを鑑定してみると、このロックリザードは目的のミスリルのやつではないことが判明した。


「ん〜、残念。お前は違うんだな。」


 目の前にいたロックリザードが逃げていったのを確認して、さらに俺はロクロ山を登るのだった。

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