ランと静葉


 当番制適用後 担当ラン




 少しムスッと不機嫌そうにランが静葉のもとへ、朝食を運んでいく。


「……入るわよ。」


「ん。」


 部屋を空けて入ってきたランと、静葉の目が合う。すると、すぐに静葉が彼女が不機嫌そうなことに気づいた。


「ず、随分不機嫌そうだな。」


「えぇ?まぁ、そりゃあねぇ。」


 朝食が乗ったお盆を優しく置いた後に、ランはドスッと音を立てて静葉の前に座った。


「あなたが来てからヒイラギがずっとあなたの事を心配して、ワタシ達に構ってくれないし。なんか距離もちょっと離れちゃったような気もするし。」


 少し悲しそうな表情でランは近ごろの不満を静葉に漏らした。


「そうだったのか……それはすまないことをしてしまった。」


 素直に静葉が謝ると、ランはポカンと固まってしまう。


「柊は昔から私のことが好きすぎるようでな……幼い頃から私が少し席を外しただけで不安そうな表情になっていたものだ。」


「…………は?なによそれ、もしかして自慢してる!?」


「いや、自慢というわけではないのだが……。ただ、師匠想いの良い愛弟子なんだ。」


「ふぅん……まぁ、そういう感情がないなら良いんだけど。」


 ツン……としながらランが静葉のことを見つめていると、彼女はクスリといたずらっぽい笑みを浮かべながらあることを言った。


「柊が私にそういう感情があるかもしれないぞ?」


「はぁ!?何を根拠に言ってるのよ!!」


「昔、柊がまだ幼い頃……何度も私にこう言ったのだ。『師匠よりも強くなって、師匠をお嫁さんにする!!』とな。」


「そんなの昔の話でしょ!?」


「昔の話とは言え、私はこれを真に受けているぞ?」


「う……で、でもヒイラギはそれを覚えてるか分からないわよ……。」


「ふふ、そうかもな。」


 どんどんランが小声になっていく。すると、いじるのをこの辺で止めようと、静葉がランが先程置いた朝食の中に用意された、ある物の事を口にする。


「さて、じゃあそろそろ……その果物を私に食べさせてくれないか?」


「さ、最初からこれを食べるの?」


「あぁ、苦しみの後に美味しいものが待っていると考えれば……それも乗り越えられるというものだ。」


「……わかったわ。」


 ランが静葉に神華樹の果実を食べさせてあげると、静葉の体がビクンと大きく仰け反った。


「ぐぁぁぁぁっ!!ぐぅぅぁあああっ!!」


 静葉が苦しんでいる様子を、手で口を押さえながら心配そうに見つめているラン。


 そして数分、苦しみぬき肩で息をしながら静葉はランに笑顔を向けた。


「さ、さぁ……美味しい朝食の時間だ。」


「ほ、本当に大丈夫なの?」


「ははは、苦しい時間はもう過ぎた。あとは幸せな時間を過ごすだけだ。」


 目の前で苦しみに耐え抜く静葉に同情したのか、少し態度が優しくなるランだった。


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