レイと静葉


 当番制適用後 担当レイ




 

 レイが今日の夕ご飯を持って、静葉が幽閉されている部屋の扉を開けると、奥にいた静葉がギョッと目を見開いた。


「おいおいおいっ!!それは私のご飯だろう!?」


「んむ?なんじゃ、1個ぐらい良いではないか。」


 今日の夕ご飯は海鮮チャーハンと餃子、そして春雨スープだった。その料理の中の一つである餃子をレイは一つつまみ食いしていたのだ。


「まだこんなにあるぞ?ふむ……もう一個ぐらい食っても良さそうじゃな。」


「やめろぉっ!!」


 静葉の願いも虚しく、もう一つの餃子がレイの口の中へと運ばれてしまう。


「わ、私の餃子が……。」


「まぁまぁ、そんなに気を落とすでないぞ。餃子の代わりと言ってはアレだが……そなたに贈り物を持ってきたのじゃ。」


 そしてレイが取り出したのは、獣人国の名産品である芋酒だ。


「それは……なんだ?」


「これは獣人の国で作られている芋酒という酒じゃ。」


「何で酒なんか持ってきたんだ?」


「腹を割って話すならば、面と向かって酒を飲み交わすのが一番じゃろ?」


 レイのその言葉に一瞬ポカン……とした表情を浮かべた静葉だったが、すぐにくつくつと笑い始めた。


「なるほど、そういう事か。確かに理に適っている。」


「じゃろ?」


 静葉の笑顔にレイも笑顔で返す。


「ところで、私はなのだが……。」


?カエルの鳴き声か?」


「違う、酒があまり得意ではないという意味だ。」


「おぉ、そういう意味があったのか。ふむぅ……ま、主もグビグビと飲んでおるし、問題なかろう!!」


 そしてレイは小さな猪口に芋酒を注いでから、静葉へとご飯を食べさせていく。その最中、レイが静葉へと名前を問いかけた。


「ところで、そなたの名は何というのじゃ?」


「八雲静葉だ。」


「シズハじゃな。ワシはレイじゃ。この名は我が主からもらったのじゃぞ〜?」


「柊が名付け親ということか?」


「親という存在ではない。この名こそ、ツガイの証じゃ。」


「なっ……つ、番だって!?」


「そうじゃ。ワシ等龍種というのは、自分よりも強いものに名をつけてもらうことが、名誉なことであり、ツガイとなる条件なのじゃ。」


「じゃ、じゃあもう婚姻届けみたいなものは書いたのか!?」


「な、なんじゃ急に焦り出しおって……そんなものは知らんぞ?」


 レイのその答えに静葉はホッと胸を撫で下ろす。


「それを聞いて安心した。さ、どんどん食わせてくれ。」


「むむ?よ、良く分からんのじゃ。」


 レイと静葉はお互いにお酒を飲みながら、夜が明けるまで語りあったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る