当番制適用後……


 当番制適用後 担当ドーナ




 ヒイラギによる当番制が施行された後、まず最初に静葉の元へ食事を持ってきたのはドーナだった。


「入るよ。」


「ん、今日から当番制が始まったのか。」


 目を開けた静葉は、食事を持って入ってきたドーナへと視線を向けた。


「そういえば自己紹介がまだだったねぇ、アタイはドーナっていうんだ。」


「ドーナ……か。丁寧にありがとう、私は八雲静葉。静葉と呼んでくれて構わない。」


 お互いに自己紹介を済ませると、ドーナは早速今日の昼ご飯である親子丼をスプーンで掬って、静葉の前に差し出した。


「ほら、口開けな。」


「んぁ……。」


 少し開いた口の中へドーナは優しくスプーンを入れると、静葉に食べさせた。


「んんっ、美味い。優しい故郷の味だ。」


 そう感想を述べた静葉に、ドーナがある質問を投げかけた。


「そのシズハとヒイラギの故郷って、日本って言うんだろ?」


「そうだ。柊から聞いたのか?」


「あぁ、ちょこちょこ話してくれてねぇ。随分便利そうな国だって聞いたよ。」


「はは、こちらの世界の人からすれば……確かに便利そうに思えるかもな。」


 静葉は乾いた笑いを浮かべた。


「どう言う意味だい?」


「こちらの世界でも法律や憲法なんかはあるんだろう?」


「まぁ、そうだねぇ。」


「私達がいた日本では、それがとても複雑に……そして厳しく定められていてね。そこに税金というものも加わって、生きているだけで苦労したものだよ。」


「そうだったのかい。」


「ま、それはあくまでも日本に住んでいた私の感想さ。観光に来る分にはいいところだと思う。風情もあって、何より飯が美味い!!」


 ドーナから親子丼を食べさせてもらいながら、静葉は目を爛々と輝かせてそう言った。


「違う世界に観光か……そんな事が出来れば良いんだけどねぇ。」


「ん?できないのか?」


 素朴な疑問を投げかけてきた静葉に、少し戸惑いながらドーナは答えた。


「そ、それは……アタイにもわかんないよ。」


「ふむ、私や柊をこちらの世界へ呼ぶことができたのだから、その逆も可能なのではと思ったが……また話が違うのかな。」


「じゃ、じゃあ仮に戻れるとして……シズハは自分の故郷に戻りたいと思うかい?」


 どんなにその質問に静葉はくすりと笑うと、こう答えた。


「そうは思わないな。今の私のいるべき場所はここだ。多分、柊も私と同じ答えを返してくれると思うぞ。」


「そうかい、後で聞いてみるよ。」


 食後のデザートまでしっかりと静葉に食べさせた後、ドーナは彼女に別れを告げて部屋を出るのだった。

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