乱入


 カルボナーラを食べ終えた師匠の口元をナプキンで拭ってあげると、彼女は満足そうに大きくため息を吐いた。


「ふぅ〜、満足満足。今日の昼ご飯も美味だったぞ。」


「喜んでもらえたなら何よりでした。じゃあ食器片付けますね。」


 食器を片付けて部屋から出ようとすると、師匠に突然呼び止められた。


「おいおい柊、何か忘れてるんじゃないか?」


「へ?」


「食後のデザートをまだ食べていないぞ!!」


「あぁ、満足満足って言っていたので、いらないのかと思ってました。」


「いる!!今日はマンドラアイスクリームを所望するぞ!!」


「わかりました。」


 マジックバッグの中から、こんな時のために用意しておいたマンドラアイスクリームを取り出した。


「流石、用意が良いな。ではまた頼むぞ。」


 そして餌をねだる雛鳥のように、師匠が口を開けると……背後の扉が突然勢い良く蹴り破られた。


「「「ちょっと待った!!」」」


 そう声を揃えて部屋の中へと入ってきたのは、先程様子を覗いていたドーナとラン、そしてレイの三人だった。


「あなた、ヒイラギの師匠だかなんだか知らないけど、いい思いしすぎじゃない!?」


「全くその通りじゃ!!」


「食べ物を食べさせることぐらいなら、アタイ達がやってあげるよ。」


 そんな三人の言葉を、師匠は一言で片付けてしまう。


「ふっ、これがというものだ。」


「なっ、そ、そんなのズルよ!!」


「はっはっは!!ズルではないぞ。コレも私と柊の積み重ねてきた年月の賜物だ!!」


「ワシには単に主に飯を食わせてほしい雛鳥にしか見えんがのぉ。」


 ドヤ顔でそう語っている師匠へと、レイは冷たい視線を向けている。


 そしていがみ合う師匠とドーナ達……。この面子で争われるのは困るな。この問題を解決するには、あの方法しかない。


「みんなの思いはわかった。でも、師匠は今自分の手でご飯を食べることはできないから……当番制にしようか。」


「当番制かい……まぁ、それならアタイは納得できるよ。」


「ランとレイはどうだ?」


「ワタシはヒイラギを独占されなかったら、それでいいわ。」


「ワシは主の考えを尊重するのじゃ。」


 三人は賛成してくれた。後は、師匠が何と言うかだな。


 チラリと師匠の方へと視線を向けてみると、彼女は今にも泣き出しそうに、瞳をうるうるとさせていた。


「わ、私はずっとヒイラギに食べさせてもらいたいぞ!!」


「師匠……お気持ちはありがたいんですが、死の女神との繋がりが解けたら、ずっと食べさせてあげられますから。それに、俺としては皆とも仲良くなって欲しいんです。」


「うぅ……。」


「お願いします。」


 師匠の前で深く頭を下げると、渋々といった様子で納得してくれた。こうして、師匠への給仕係は当番制になったのだった。


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