90点
カルボナーラをみんな分作ってから、俺は師匠の分を持って彼女が幽閉されている場所へと向かった。
「師匠、ご飯持ってきましたよ。」
「おっ!!きたきた〜、この時を待ち望んでいたんだ。」
カルボナーラが運ばれてくると、師匠はクンクンと鼻を鳴らして必死に匂いを嗅ぎ、口元からよだれが零れ落ちそうになっていた。
「言われた通り、分厚く切ったベーコンは表面カリカリに焼いてきましたよ。」
「ふふふ、ありがとう柊。手が動かせれば頭を撫でてやりたかったぞ。」
「もうそんな歳でもないですよ。」
「そうかもしれないな。さ、早くパスタが伸びる前に私に食べさせてくれ。」
師匠にご飯を食べさせて数日経つから、だんだん慣れてはきたが……この師匠に食べさせてあげる瞬間は、なかなかどうして緊張というか、恥ずかしい気持ちがある。
「それじゃ、口開けてください。」
「あ~んしてと言っても良いんだぞ?」
「それは恥ずかしいので、普通に食べてください。」
「つれないなぁ。ま、良いだろう。」
ベーコンと玉ねぎとパスタをしっかりとフォークでまとめて、師匠の口に近づけると、飛びつくように師匠はカルボナーラを口にした。
「んむ……うん!!美味いぞ!!90点だな。」
「100点じゃないんですね。」
「だって、もっと勉強すればもっと美味しいものが作れるようになるのだろう?」
「まぁ、それはもちろん。」
「ならば、今100点をつけるのは時期尚早だろう。もっと美味いものが食べれるかもしれないのだからな!!」
「ご尤もですね。」
「ほらほら、私はまだまだ満足していないぞ。どんどん食わせてくれ。」
「さっきみたいに飛びつかないでくださいよ?危ないですからね。」
「ははは、待ちきれなくてな!!あんまり焦らすとまた食いつくかもしれんぞ?」
そして師匠にカルボナーラを食べさせている途中……後ろからジトッと背中に張り付くような視線を感じた。
「ん?」
チラリと後ろを振り返ると、格子状になった扉の空気口からドーナとラン、そしてレイの三人が羨ましそうにこちらを、じっと見つめていた。
その視線に師匠も気づいたようで、悪い笑みを浮かべると、俺にあることをお願いしてくる。
「柊、少し口元にソースがついてしまった。」
「それ、今わざとつけましたよね?……今拭きますね。」
ナプキンで師匠の口元を拭っていると、後ろの扉の方からバキン!!と何か硬いものが折れる音がした。
後ろをまた振り返ってみると、さっきまであった格子状の棒が一本もなくなっていて、へし折られたような跡が残っていた。
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