二種類のカルボナーラ
師匠からの注文を受けた俺は、早速屋敷に戻ってカルボナーラの調理を始めた。ちなみに今回はパスタということもあって、ドーナが隣で勉強中だ。
「じゃ、今日はカルボナーラを作っていくぞ。ドーナはカルボナーラってどういうパスタなのか、知ってるな?」
「まぁ一応……。」
「じゃあ、カルボナーラの作り方が地域によって違うことも知ってるか?」
「え!?そ、そうなのかい!?」
「意外だったろ?ま、とりあえず今から二種類……本場のカルボナーラと日本で馴染みのあるカルボナーラを作ってみせるから、食べ比べてみると良い。」
パスタを茹でている間に、二種類のカルボナーラ両方に使うベーコンと玉ねぎを炒め、二つのボウルに均等に分けた。
そして別々にソースの材料をボウルの中へと投入していく。
「良し、パスタも茹で上がったな。じゃあこれをソースの入ったボウルに入れて、湯煎しながらパスタをソースに絡める。」
鍋に直接パスタソースを作って、火にかけながら絡めても形にはなるのだが……こうやって予めボウルの中にソースの材料を混ぜておいて、湯煎にかければ滑らかなカルボナーラが出来上がりやすい。
二種類のカルボナーラを仕上げたところで、ドーナの前に二つ並べてみた。
「さ、違いはわかるかな?」
「う〜ん、微妙にソースの色の濃さが違うし、ソースの量も違うねぇ。」
「うん、じゃあどっちが本場の作り方で作ったカルボナーラか、判別はできるか?」
「……これだけだとちょっとわからないねぇ。」
「それなら食べてみると良い。味もまるっきり違うぞ?」
「うん、わかったよ。……いただきます。」
二種類のカルボナーラを食べ比べたドーナは、大きく頷きながら、片方のカルボナーラを指差した。
「多分、こっちが本場のカルボナーラだと思う。」
そしてドーナが指さしたのは、不正解の方のカルボナーラだった。
「残念だけど、不正解だ。」
「えぇ!?じゃ、じゃあこっちが本場のカルボナーラなのかい?」
「そうだ。ちなみにどういう味で判断したんだ?」
「こっちの不正解の方は、全部の材料の味がまとまって感じれたんだよ。でも、本場のやつは卵とチーズが突出してたから……違うのかなって思ったんだ。」
「なるほどな。」
観点は合ってる。だが、調和した味と突出した味で迷ったんだろうな。
「結果は不正解だったけど、ドーナがどっちが好みかは良くわかったよ。」
そういう事で今回作るのは、本場のカルボナーラ……ではなく日本でアレンジされたカルボナーラにしよう。
多分師匠もアレンジされたカルボナーラのほうが、口に合うはずだ。
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