カリン、オムレツへの挑戦①
イリスと別れて、再びカリンの屋敷へと戻った俺は、彼女に新品のオムレツ用のフライパンを手渡した。
「練習でも本番でもこれを使ってください。」
「感謝するぞ社長。」
カリンはフライパンを受け取ると、少し驚いたような表情を浮かべる。
「意外と軽いのだな。鉄でできている故、この大きさでも重いのかと思っていた。」
「それの素材は鉄じゃないんです。アルミニウムって金属で作られたフライパンなんですよ。」
「あ、
「ちょっと馴染みはないかもしれませんね、でも熱の伝導率も良くて、それに軽くて……扱いやすいんですよ。」
「うむ、確かに扱いやすさは持っただけで分かる。」
「ただ、気を付けないといけないのが……そのフライパンの表面には食材がくっつかないように、特殊な加工がしてあるんです。強く擦ったりすると、それが剥げてくっつきやすくなるので、それだけは気を付けてください。」
「扱いやすい分、取り扱う時には注意を払わねばならんということだな。」
「そういうことです。」
テフロン加工がされたフライパンは、食材がくっつきにくいが、ちょっとした事で加工が剥げてしまったりする、なかなかデリケートな調理器具だ。
特に注意すべきなのは洗う時……目の細かいスポンジや布で力を込めずに洗わなければならない。
「それじゃあ実践する前に……まずはオムレツをひっくり返す技術を体で覚えましょう。」
彼女が手にしているフライパンに、少し丸めた布を入れた。まずはこれでオムレツをひっくり返す技術を身に着けてもらう。
最低限、どうやればひっくり返るのかがわかっていないと、挑戦したってスクランブルエッグになってしまうのは目に見えているからな。
「た、確かここを手でトントンと叩くのだよな?」
「はい、柄の部分を叩いても良いですし、フライパンを握る手首をこうやってトントン……って叩いてもひっくり返りますよ。」
「こ、ここに来て新しい技を披露するな!!」
カリンは子供たちの視線が降り注いでいる中、フライパンの中の布をひっくり返そうと、必死に手首を叩くが、まるでひっくり返る様子がない。
「な、何故だ!?やっていることは同じはずだ!!なのに……何故クルリとひっくり返らんのだ!!」
原理が分からずに悶絶しているカリン……。さてさて、どのぐらいで彼女はコツを掴むだろうか。
三十分?いや、一時間?まぁ、幸いにも時間はたくさんあるから、しっかりと身に付くまで練習してほしいな。
その後、シア達はまた遊びに出かけてしまったので、それからはカリンとマンツーマンでオムレツの練習が始まった。
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