マドゥを救う方法


 カリンにマドゥの母親の診断書を渡した後、俺は彼女にあるお願いをしてみた。


「あの、マドゥの実験記録をもう一回見たいんです。」


「構わんぞ、では此方の屋敷へ参ろう。」


 カリンの屋敷へと招かれると、彼女の部屋へと案内された。そして彼女は厳重な鍵のかけられた箱から、マドゥの実験記録を取り出した。


「好きなだけ目を通すと良い。それで何かマドゥを元に戻せる手がかりが見つかれば大儲けだ。」


「ありがとうございます。」


 カリンから実験記録を受け取って、一枚一枚情報を余すことなく読み取っていく。正直なところ、真剣に読み取るにはかなり精神的にキツイ内容ではある。

 だが、これをしっかりと読み解かないことには、マドゥを元に戻す手がかりは見えてこない。


 そしていよいよ最後の一枚に目を通した時……ある文章が俺の目に留まった。


「ん?被験体066を元に戻したければ、世界樹の果実を食わせろ?」


「あぁ、真実かどうかは分からんがそう書いてある。」


「でも世界樹の果実はこの前……。」


「土に還し、新たな世界樹へと芽吹いたばかりだ。果実が実るには、少なくとも後百年は年月が必要だ。」


「百年、その頃にはマドゥはもう……。」


「あぁ、生きていれば長寿だな。」


 ここに書いてある言葉が真実なのかはわからない。でも唯一頼れそうなものはこれしかない。


「世界樹の果実…………ん?果実?」


 世界樹の果実ではないが、俺も神聖な果実はいくつか持っているぞ。


「確か、まだ残っていたはず。」


 マジックバッグの中へと手を突っ込み、俺は神華樹の果実を取り出した。それを目にしたカリンは首をかしげる。


「社長よ、それは何だ?なにやら凄まじい力を感じるが……。」


「これは神華樹っていう植物の果実です。」


「なっ!?し、神華樹だと!?」


 カリンは神華樹の存在を知っているらしく、めちゃくちゃ驚いていた。


「何故そんな物を社長が持っている!?」


「えっと……たまたまダンジョンの宝箱から種が出てきたんです。で、それを育てて収穫しました。」


「馬鹿な、これはそもそもこの世の物ではない。神の世界の遺物だぞ!?普通の人間に育てられる代物ではないはずだ。」


「じ、実はそれには色々理由があって……。」


 その後、俺は神華樹についてカリンに小一時間ほど質問攻めにされた。

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